第13話

「――は、はい……、な、何でしょうか? 言い訳を許して頂けるのでしたら、物置が崩壊したのは、5年近くも雨ざらしになっていた事でして、私には一切の落ち度が無い事は裁判でも説明をしたく存じまして――」

「はぁ……、なんだ、その言葉遣いは……。それよりも怪我はないのか?」

「――え?」

「だから怪我はないのか? と聞いている」


 物置が崩壊したことよりも私の身を案じてくれている事に少し感激しながらも頷く。

 もしかしたら、高槻さんは目つきが悪くて、ヤクザ顔負けの顔をしていて威圧的に話してくる俺様口調のちょっと傍若無人な苦手な人だけど、いい人なのかも?


「そうか……」


 彼がホッと表情を見せる。

 やっぱり私の身を!


「お前に怪我あったら、俺の監督責任が問われるからな。まったく余計な心配をさせるな」

「……」

「それと、その物置小屋は近々、新しいモノにする予定だったから壊れても大丈夫だ。あと、昨日の箪笥だがお前の借金にプラスしておいたからな」


 髪の毛を掻きながら、それだけ言うと用事は済んだとばかりに母屋へ戻っていく高槻さん。

 

「何よ……。少しでも、いい人だって思ったのに……」


 ――まったく違った!


 分かっていたけど! 分かっていましたけど! もう少し、こう! 優しく接してくれてもいいのではないのか? と、思ってしまう。

 それに、昨日は母親の形見だと言ったら「大事な物なんだろう?」と、すぐに買い戻してくれたのに……。


「借金が増えました……。――というより、私って時給いくらで雇ってもらっているの?」


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