第10話
「はい。何か、昨日はすいません」
「いえいえ。気になさらずに」
「それに用意してもらった布団や私のことも此処まで運んでくれたんですよね?」
「布団を運んで敷いたのは私ですが、宮内さんを、この部屋まで運んだのは高槻様です」
「――え?」
「ふん。一応、お前は俺に嫁入りするという体裁をとっているんだ。別の男に抱えさせて運ばせるような真似を第三者が見ていたら困るだろう? だから、俺が運んだんだ」
……そう……なんだ……。
「ありがとうございます」
何と言うか、あれだよね?
高槻って人はツンデレ? ツンツン? そんな感じがする。
言葉遣いや態度こそ粗野だけど、本当のところはそうでもないような?
「礼はいい。それよりもだ。まずは朝食の準備と境内の掃き掃除をしておいてくれ」
「分かりました」
制服のまま、私は朝食をササッと作る。
幸い、台所などの水回りはリフォームをした際に新調されたようで、ステンレス製のシステムキッチンに、大型の冷蔵庫にオーブン、電子レンジと言ったモノまで揃っている。
これなら大抵の料理は出来る。
「えっと……、冷蔵庫は…………えっ?」
何と! 冷蔵庫の中は空っぽ。
これで朝食を作れとか無理!
一体、男性陣は普段は何を食べているの? って思うくらい。
これでは何も作れない。
報告に向かう為に、台所から彼が居るであろう居間に入ると、ちょうど眼鏡を掛けた彼がノートパソコンに向かいあって何かをしていた。
眼鏡をするだけで雰囲気がすごくやわらかく感じたのは気のせいではないと思う。
ハッ! として気を取り直して――、
「――あ、あの高槻さん」
「総司と呼べ」
「――で、でも……」
男の人を下の名前で呼んだことの無い私にはハードルが高い。
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