第3話 廃神社に引っ越しですか?
――巫女として?
その言葉は、私にさらなる疑問を投げかけてくる。
それと共に、自分が考えていた最悪の事態とは異なることに安堵の溜息をつきながらも――、
「あ、あの……。藤田さん」
「どうしたの? 莉緒ちゃん」
「さっき言っていた話って……」
そう、さっき藤田さんは、私が高槻という男の元に嫁入りするような事を言っていたのだ。
あまり考えたくない事だけど、それが本当なら大問題っ!
「えっ?」
「――ですから、さっき嫁という単語が聞こえたような……」
「本当のことだぞ」
私の問いかけに答えてきたのはヤクザ顔負けの鋭い目つきをした厳つい体躯の高槻という男性。
髪を染めてはいないけど、オールバックの髪形がさらに威圧感を醸し出しているし!
さらに言わせて頂けるのなら、口調もぶっきらぼうで――、粗暴な印象を増大させている。
「あ、あの……」
「総司君。何かあったのかしら?」
「いえ、どうやら彼女は――、宮内さんは私との婚約の話を聞いていなかったようで……」
「あら? そうなの?」
「はい。私は、てっきり彼女は父親である#宮内__みやうち__# #宗助__そうすけ__#さんから話を聞いていたものとばかり……」
いま、私って言ったよ!? この人! 私と二人きりの時と態度があからさまに違いすぎるんだけど!?
「それは困ったわね。もう部屋を解約する手続きとかしてしまったわよ?」
「そうですね。とりあえず彼女は承諾してくれていませんが……、一応は婚約者ということで許可を頂いた私が何とかして見ますので」
「あら! 総司君も立派になったものね! 昔は、やんちゃだったのに!」
「よしてください。それと、こちらを――」
「滞納していた家賃も払ってくれるなんて! 本当にいいのかしら? 婚約者として、莉緒ちゃんは承諾していないのよね?」
――とか、大家さんは言いつつ、極めてニコやかに高槻という男から茶封筒を受け取ると中身を確認して満面の笑みを浮かべる。
そういえば、うちは何時も慢性的な金欠で家賃を滞納したことは毎回のごとく。
電気・水道・ガスの内、電気とガスが止められることも良くあった。
そんな人間が家賃を全額払ってアパートから出ていくというのなら、大家さんとしても引き留める確率は非常に低いのかも知れない。
「大丈夫です。私は、彼女を一目見た時から運命を感じましたから」
「あらあら! それじゃ、あとは御若い二人に! アパートの部屋の鍵はポストに入れておいてくれればいいからね! 莉緒ちゃんも、いい人で良かったわね!」
「ええっ!?」
私の驚きの声を喜びと勘違いしたのか知らないけど大家さんは、そのまま立ち去ってしまった。
アパートの階段を降りる音が聞こえてきた事から、間違いなく私がアパートから出ていくことを納得してしまっているようで。
「――さて、莉緒。さっきも説明した通りだ。お前には、俺のところで働いてもらう事になる。もちろん住み込みだ。いいな? 拒否は認めないぞ?」
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