第2話

 渡された紙――、それは借用書と書かれていて……、そこに書かれている貸したお金の額は8ケタというとんでもない額になっている。


「という訳だ。君の父親が失踪したから、家財道具は全て借金に当てさせてもらった。――で! 一応、君には足りない借金を働いて返してもらいたい訳だ」

「無理です! 絶対無理です! そもそも、父親の借金を娘が払う必要性は無いとドラマで見ました! これは違法です!」

「ふう……。一応は、君の拇印もそこにあるんだがな」

 

 たしかに男の言うとおり、お父さんの印鑑の隣に私が押した記憶の無い拇印が! 印鑑ではなく拇印が!!


「えっと、これは何かの間違いです」

「間違いも何も、この国は書類国家だ。君の拇印がある以上、君には返済義務があるという事を知ってもらいたい。それに――」


 男は、さらに言葉を続けるべく口を開く。


「今日から、どうやって暮らすつもりだ?」

「それは……」


 私は、部屋の中に電気家具どころか家財道具すら一切! ない! 部屋を見て返答に戸惑う。

 まさか、親が夜逃げをして暮らせないので何とかしてくださいと泣きつくにも時間は、すでに午後5時を過ぎていて村役場も閉まっている。

 きっと公務員だから残業もしてないし、定時時間を過ぎた問題は役場では受け付けてくれない。


「おや! 宮内さん」


 途方にくれていた所で、男が立っている玄関前に現れたのは大家の藤田さん。

 年齢は50歳のおばさんだけど、それなりに話したことがある人で、もしかしたら説明をしたら何とかしてくれるかもしれない。


「藤田さん、大変なんです!」

「そう。聞いたわよ! 高槻(たかつき)さんのところに嫁入りするのよね? それで引っ越しするからって聞いたわよ? もう、荷物も運び終わっているようね」

「ほえ!?」


 一瞬、何を言っているのかまったく理解が出来なかった。


「あら~! 高槻(たかつき)君じゃないの! ひさしぶりね」

「お久しぶりです。藤田さん」

「ずいぶんと立派になっちゃて! まるでヤクザみたいに見えるわよ!」

「そんなこと、ある訳ないじゃないですか!」


 二人してにこやかに談笑する姿を見ながら、藤田さんでもヤクザに見えるんだーっと、思わず心の中で突っ込みを入れつつ。


「え? どういうことですか!?」

「だから言っただろう? 君には、神社(うち)で巫女として働いてもらうと――」

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