第4話
人口4000人程の小さな村――、戸沢村。
そこでは高校生が出来るアルバイトなど殆どないし、一人で暮らすことなんて不可能。
そして……、目の前の高槻という男が言うには書類があるからと――、私のお父さんから婚約者としての承諾も得ていると言っていて、完全に進退が断たれてしまっている。
まぁ……唯一の救いと言えば大家さんが言っていたように私が嫁入りするという話が出回っているから酷い扱いはされないという事くらいだけど。
「わ、わかりました……。お世話になります」
「分かったならいい。ついてこい」
私は高校指定のバックを持ったまま家から出る。
もちろん男は、部屋のドアに鍵をかけたあとポストに入れて階段を降りていく。
私はその後をついていくことしかできなかった。
――そしてアパートを出たところには黒塗りのベンツが停まっていた。
車に近づくと運転手側のドアが開く。
中から出てきたのは20歳前半のスーツを着た男性。
「ずいぶんと時間が掛かりましたね」
「ああ、それより早く車を出してくれ」
「分かりました」
すぐに車のエンジンがかかる。
そして――、高槻という男性は、車のドアを開けると――。
「さっさと乗れ。時間がもったいない」
「そんな言い方しなくても……」
いいのに……、――と心の中で呟きながら車に乗る。
もちろん高槻という男も私の隣に座ってくる。
「早く出せ」
男の言葉が合図だったかのように車は走り出し、3分ほどで山の中腹の場所に位置する神社に到着する。
「――え? ここって……」
「知っているのか?」
「5年前に神主の方が他界してから、お祭りも無くなったから……廃社になったって――」
「なるほどな。今日からは、ここが俺とお前の家になる」
「この廃神社で!?」
「お前は、少し神社に対する敬意を持った方がいい。それと、今日からは俺のことは総司と呼ぶようにな」
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