第9話

仔竜が親竜の元に戻った頃。

何度も何度も喧嘩をしました。

お互い気が立っていたのもあるでしょう、喧嘩をして謝って。


でも、仔竜は嬉しく感じる点もありました。

あの大きな存在だった親竜と《喧嘩》ができているのです。叱られるのではなく、説教でもない。


その事が嬉しくもあり、怖くもありました。


偉大だった親竜。今でも偉大だけれど。

親竜の衰えも感じたのです。

とても聞き取りづらいものではありますが、忍び寄ってきているであろう恐怖は計り知れないものになっていました。




仔竜がまだ幼竜だった頃。

周りを飛び跳ねていた《小さいもの》も今では数少なくなっていました。


ああ、これだけ年月が過ぎたのか。その事実は仔竜の背後で舌舐めずりをしたのです。




生ある者には必ず、皆平等に死が訪れる。

ぼんやりと他人事として考えていた事を今、目の前に叩きつけられた気分でした。


そして、何より。

自分が墓守になるのだなぁ。

置いて逝かれるのだなぁと実感し、泣いたのでした。




その日もザァザァと雨が降る日でした。

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