第8話(少し鬱)
仔竜が成竜になって暫く経った頃。
親竜から便りがありました。
それは、仔竜が仔竜であるために今まで必死に唱えていた根幹を揺るがすものでした。
己が竜であるのかすら疑う物だったのです。
過去の己が舞い戻ってくる足音を聞いた、とその時仔竜は悲しげに言っていました。
どうしていいのかわからない、だけど、親竜と話すことも怖くてできません。だって、嫌われていたかもしれない事実を、面と向かって言われるかもしれないことが、とても恐ろしかったからでした。
何度もその便りを読み返して、意を決して連絡を取ったのです。
その後、親竜も仔竜も泣きました。
強い親竜が泣くことを、仔竜は意外に思いました。
本当に泣かない竜でした。
笑わない竜でした。
その竜が今、耳元で泣いている。
申し訳なさでいっぱいになりました。
育てて貰ったのに泣かせてしまった事に悔いました。
ここで思いに変化がありました。
己が愛されているかは、正直わからない。でもいいのだ。
己が親竜を愛していることには変わらないのだから。と。
そう思えるまで、親竜と話すことを極力辞めていたことは…きっと知らないのだろうなぁ。と仔竜はポツリと溢しました。
溢れたのは言葉か、雫か、それは定かではありませんでした。
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