第6話(病んでる)

親竜には不思議な力がありました。

激しい感情を抱くと天気が変わるのです。


仔竜は自身が幼い頃から、それを認識しておりました。

ああ、今日はご機嫌が悪いようだ、だって雷鳴っているもの。

空の天気で把握するのはお手の物となりました。



そんな折でした。

仔竜の感情の糸が切れかけたことがありました。心ない言葉にすり切れて、我慢して。

始まりから約七年が経っていました。


きっと聞いても、知らぬ存ぜぬと言われると決め込んで。それでも吐かずにいれなかった言葉の数々が親竜の前に晒されました。


思いとは裏腹に、親竜は激昂しました。

自身の仔に吐いた言葉、許さでおくものか。と。


その時、強い雷が地面に突き刺さる程に落ちたのを仔竜は覚えておりました。


《愛されているかもしれない》

強い感情が発される親竜を見て初めて、仔竜はそう思ったのです。


歪な愛情の感じ方は、それからしばらくの間続きます。親竜に申し訳ないと思う心の反面、仄暗く甘い感情は仔竜の生きる糧になったのでした。

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