24 悪女
「私がゆきと関わってる理由は、顔がいいだとかそんな単純な理由じゃないよ」
「じゃあ…」
中身…?
まさか、ね
ゆきさんが顔がよくて中身もいいやつなんて、私が許さない
「簡単に言うと、シンパシーみたいなものかな…」
シンパシー…?
「長く生きているとね、私にいい寄ってくる女性って言うのは目的が限られてくる、私のお金とか、権力とかそういうもの
…けど、そういう女性はすぐにわかってしまうんだよ
私はそういう女性をかまってあげられるほど、時間もないし、寂しいわけでもない
そして、そこまでのお人好しで優しい人間でもないんでね
ゆきは、そういう私が目に見えて持ってるものではなく、私自身を見てくれたことで、魅力を感じたんだよ」
彼は、見た目だけで擦り寄ってくる女はその段階で振り落としているのか…
で、ゆきさんに魅力を感じるねぇ…
要は外見じゃなく、中身を見てくれたからってことか
でもそれは彼クラスのいい男だから、選べるんだろうな
大抵みんな妥協ってやつをして、そこそこの相手でやっていってるわけだし
「納得してない顔だね」
男は酒を傾けた
氷が鳴る
「えっ?」
「私がゆきに感じたシンパシーは、彼女の生きざまだよ
かなり苦労して、育ったみたいだから」
生きざま…
「多分それが彼女を作ってる魅力であり、オーラだと思うよ」
「…ゆきさんの生きざまって…苦労ってどんなことなんでしょうか?」
男は笑った
ニヒルな笑みで
「私から言うもんじゃないよ、そういう話はね
直接本人に聞いてごらん」
な…
「おや、もうこんな時間か、ママごちそうさま」
男はまたスマートに私の分まで会計を済ませると、出口まで送ってくれた
「じゃあね、気を付けて帰るんだよ」
私は口をつぐんで、視線を落とした
「素敵な顔が台無しだよ、姫」
優しく頬を撫でる男
私はその手を払い除けた
男は苦笑すると続けた
「君は人のことより、自分を磨くことに専念したほうがいい
そうすれば今より魅力的になれるよ
人と比較する事がどんなに醜くて、自分を小さくみせるかわかるかい?」
男の言葉ではっとする
そうだ…
私は…
男はニマリと口の端を歪めると、そっと私の手を取り裸の一万円札を握らせた
しっとりとした、冷たい手
「こんな時間に女性が1人で夜道は危険だ、タクシーを使いなさい」
「…ありがとうございます」
下に降りて振り返っても、男はまだ手を振っていた
一万円渡されたが、私の家はその半分以下で着く
タクシーに乗りながら、私の家、今は麻衣の家を通り過ぎた
懐かしい我が家
麻衣は元気だろうか?
私の部屋だった場所に電気は着いてない
もうさすがに寝ちゃったかな…?
握りしめた一万円の残りで、明日久しぶりに麻衣と食事でも行こうかなとぼんやり考えてメールを打った
目が覚めた頃には見てくれるだろう
昼過ぎ、目覚めると麻衣からメールが入っていた
麻衣\(^O^)/おはよう!
仕事は夕方に終わるから、それからなら大丈夫だよ!
ってか久々じゃない?(・・?)全然メールくれないし…φ(.. ;)イジイジ
愛寂しかったぞー
今日は思いっきり食べて、語っちゃお☆
めちゃめちゃ楽しみ\(^O^)/
またメールします(*^□^*)
愛
それを確認すると、無意識に微笑んだ
テンション高いな…私も楽しみになってきた
了解とメールを打ってお風呂に入り、支度した
クローゼットには、麻衣らしいかわいい服たちが沢山並んでいる
麻衣はスカートが似合ってた
私も寒いけど、頑張ってスカートを履いて足を出すことにした
もうよれよれの服きて、くたびれた私なんて見せない
夕方、麻衣からメールを受信すると私たちは街唯一の娯楽施設である総合デパートに出かけた
そこにはショッピングの他にフードコートもあるので、買い物してから食事場所を探そう、といちいち回らないで一ヶ所で住むのが何よりの利点だ
久しぶりと会った麻衣は、私の外見の雰囲気にマッチしたスキニーに黒い網のボレロとストローハットをかぶって、かっこいい感じになっていた
そんな服、愛の時には持ってなかったので多分チェンジしてから麻衣が自分で買ったのだろう
「服かっこいいね!買ったんでしょ?」
「そうだよー、なんか愛…じゃなくて麻衣が履いてるスカート懐かしい!私のお気にのやつだー!」
「はいてきちゃった…」
お互いきゃっきゃと誉めあうとフードコートに移動してご飯を選んだ
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