22 悪女

多少の援護があったものの、みんなさほど彼女に興味ないといった感じで、それきりその話は流れ、それ以降掲示板は私と由美さんが不仲になった話題で盛り上がっていた



…つまんねーな…


みんなもっと彼女に興味持てよ


ナンバーワンだぞ?


そんなやつのスキャンダルなのに、祭りにならねーの?


私と由美さんの話題こそまじどーでもいいだろ!



つかガセネタじゃねーし!


私はイライラして足踏みした



…結局彼氏なのか客なのかもわからないし、手繋いだくらいじゃどっちかもわからないよ…






そこで、脳天から雷を受けたみたいに瞬いた


雷受けたことないけど



そうか、直接彼に聞いてしまえばいいのか


ゆきさんがだんまりを決め込むなら、私が直接彼に会ってしまえばいい…



幸い、さっきの現場で私は見られてない



そう思ったら、瞬く間に支度をして昨日の今日でまたあのバーに向かおうと歩みを進めた



行って会えなかったら…



一瞬そんな考えが過ったが、彼の言葉がフラッシュバックしてくる



ご縁があればまた会えます、必ず



縁か…



占いとか運命とか、信じないけど、彼とはなんとなく…ご縁を感じるよ






更衣室を出るとき、ゆきさんの姿はなかった



私はそのまま、また昨日のバーに向かう



人通りの少ないわき道に入って狭い階段を登っていくと、ひっそりとその店は佇んでいる



若干緊張しながら扉を開ける



「いらっしゃい」


ママの声が聞こえる


私は瞬時にこないだ彼がいた奥の席に視線を向けるが、そこにはいなかった



ついでママのカウンターの席に目を移すと、見たことあるボトル



バランタイン…



視線をあげると、私と目線がぶつかった


ニヒルな微笑み



私はその陰りある瞳に吸い寄せられるよう、一歩前に出た



「やあ、また会えましたね」



湿り気のある低い声音が響いた






私はそのまま隣に座って、会釈した



「こないだはありがとうございます」



「いいえ、困っている女性を助けるのは男の務め…だからね」


またいたずらな微笑み



そんなキザなセリフもさらりと言ってしまう


そして何か似合ってる



ママから手渡されたビールで彼と乾杯して、一気に半分くらい飲み干す



「いい飲みっぷりだね」



初対面に近い状況で、付き合ってる人いるんですかは聞けないからな…



ある程度飲まないと



「ママ、おかわり」


飲めば飲むほど、体の浮遊感と比例して頭はしっかりしてくる



なんか職業病なのかな



酔えば酔うほど、しっかりしなきゃと頭が働く



潰れてしまうことができない






ある程度飲んだところで、酔った振りをして核心を突こうと思っていた



「同じお酒下さい!」



「スコッチだよ?飲めるかい?」



正直酒の味はわからない


嗜んで飲むことなんかないからね


売り上げのためだけに飲んできたから


ビールもウイスキーも腹に入ればみんな同じ酒だ



小さなグラスに入れられた茶色い液体を胃に流し込む



どろりと食道から焦がしていった


「すごいね、お酒強いって言われない…?」


「いいえ~…強い振りです、そうしないと、勝ち上がって行けないからっ」



「何に?」



「ゆきさんに」






そう言いながら男の表情を瞬時に盗み見る


賭けだ



ゆきさんという単語に反応するか



男は垂れ下がった瞳をこちらに真っ直ぐ向けた



「ゆきさん…」


それから眉間に皺を寄せ、考える仕草をした



「彼女お店のナンバーワンなんですよ」



「お店って、ミスティック…?」


「そうです!なんでですか!?一発でよくわかりましたね!」



「君お店ではなんて名前なの?」



「麻衣、です」



すると男は瞬いたように、指を鳴らした



「麻衣!君が麻衣か!」



急に笑顔になった男にびっくりしてどうしたのか尋ねた

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