21 悪女

2人はとある店でかなり粘って、彼女の服を買っていた


その間、私はHMVで好きなアーティストの曲を聞き惚れながら時間を潰していた


大きなショップバックをぶら下げて、エスカレーターをまた降りていく2人



私もあわてて2人を追って、下に降りる



スタバに入って行く2人を見届けると、向かいの雑貨屋で様子を伺った



品物を頼んで、椅子に座ると2人は談笑しはじめたみたいだった



そんな2人を見ながら我にかえる



つーかここまで来て何やってんだ私…


携帯のディスプレイをみたら、もうすぐ夕方の五時になろうとしていた


もう外は薄暗い



結局、私の自由な時間は、ゆきさんの尾行をして、半日潰しただけに終わった






もう夕飯食べて、支度しなきゃ…同伴じゃないし、ゆっくりしてらんない…



帰ろうと、最後にスタバを横目で見ると、丁度ゆきさんたちもスタバから出てくるところだった



あっヤバ…かぶる…!



私は慌て電話する振りをして端に避けた



その時、ゆきさんとその男が腕を組みながら出口に向かっている姿がばっちり視界に入ってきた


見てはいけないものをとうとう見てしまった衝撃と、私しか知らない秘密を握った優越感が感情を支配する



不動のナンバーワンの弱み…


私はしばらくそのまま2人を茫然と見守っていたが、ふと手に持った携帯で匿名掲示板を開いた



掲示板は相変わらず荒れている


かまわず私は、初めて書き込みをした



みんなビックニュース!w(°O°)w


今某ショッピングモールで、ミスティックナンバーワンのゆきちゃんと、イケメン彼氏のデート現場を目撃!!(*/ω\*)


手も繋いでたし、ちょーラブ②だったよ(*^□^*)






それだけ書き込むと、携帯を閉じた



ふっ…


ふふふっ…


みんなどんな反応するか楽しみだなぁ…



私は足取り軽く店に向かった



途中コンビニに寄って夕飯を買い込み店に着くと、早めの出勤支度を始めた


ふと、更衣室の隅に、見覚えのある紙袋があった



近寄ると、それはさっきゆきさんが持っていたショップバックだった


どうやら私より早く来ていたらしい



すると背後から扉が開く音と同時に、おはようございますという声がした



ゆきさんだ



さっき尾行した時と同じ格好をした彼女

間違いはない


「おはようございますー」



私は平静を装ってあいさつした






私はそんな彼女に素知らぬを振りして話し掛けた



「そいえばゆきさんって、彼氏とかいるんですか~?」



なるべく明るく問い掛けると、ゆきさんは私から急に話し掛けられたからか、瞳をさらに大きくして一瞬フリーズすると、憂いを帯びた瞳に変わり口の端を歪めた



「急にそんな質問、珍しいね…?」



私を射ぬく、魅惑的な瞳



私が掲示板に書き込んでから、そんな経ってない


ゆきさんはもうそれを知っているんだろうか…?


ちとストレートすぎたか…?



「えっ?そうですか?普段ゆきさん忙しいし、こうやって二人きりになること少ないから、お話出来るのって今かなって思って…入った時から話してみたいなぁとは思ってたんですよ!」


「そうなんだ」


ゆきさんは掴めない表情で言うと、化粧を始めた






ってか、あれ…?


今ふつーに、かわされた…?



ゆきさんはそれきり、否定も肯定もなく黙々と化粧直しをしている


また私から話かけるのもなんか気まずくなって、更衣室は一気に無言空間になった



馴れ合い、好きじゃないのかな…?



人と絡んでるとこ見たことないし



こいつも私と似たようなもんだな



つまんねーの!


私は夕飯のサンドイッチをつまみながら、かったるく営業メールを始めた





それから特に代わり映えなく、今日も無難に仕事を終えて更衣室で着替えた



ふと、またあのバーに行ったら彼に会えるだろうか…と考えたが、やめた



ゆきさんと一緒にいた現場を目撃したし、関係性もわからない手前、うかつに動けなかった



でも、掲示板に書き込んだから、なんらかの情報は書き込まれているはず…



そう思って、さっき書き込んだ掲示板を思い出して、サイトにアクセスした








………なんだこれ…!?








「ガセネタこいてんじゃねーよ(-_-メ)凸!」


「ゆきさんなんか彼氏たーくさんいるよwナンバーワンなんだからw」


「本当に彼氏なのかな?ナンバーワン(笑)なら客とも手繋ぐっしょ」


「つか、ゆきネタつまんないよねー(・∀・)興味ないしwはい、次の話題どぞー」


「今は麻衣と由美の不仲説のが楽しい~~~☆」

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