17 悪女
本当はゆきさんみたいなかっこいい、出来る女に憧れるけどね…
今の麻衣には似合わない
愛の時の私は、麻衣みたいな可愛いくて守ってあげたくなるような女の子になりたかったけど…
人って無い物ねだりだよね
きっとゆきさんだって、ピンクとかキュートでラブリーな女の子女の子した感じは全く似合わないと思う
真逆だし
だから、私は今私の持っている武器で戦う
戦う相手は強いかもしれないけど、土俵は同じ
勝つか負けるかは自分次第なんだよ
今の私は、負けや失敗して人のせいにするほど、弱くない
自信があるから
出勤してその格好に着替えると、由美さんが出勤してきた
相変わらず、アイラインをがっつり引いたケバい化粧
その後から、ぞろぞろと女の子たちが出勤してきた
みんな気だるそうに出勤してくる
「おはようございます」
私は久しぶりに自分から挨拶した
前は私が挨拶するよりも先に、由美さんなんかが話しかけてきたから
私が挨拶してもみんな無視して、その内2人くらいが目も合わさずに着替えながら小さく、おはようございます、と挨拶してきた
無視したやつは、隣の同僚と直ぐ様話しだした
ダルいよね~まじ帰りたい
うん、ちょーわかる
…だったら辞めたらいいのに
誰もあんたに来てほしいなんて望んでないよ
仕事が出来ないやつほど、文句や愚痴が多い
その労力を仕事で使えよ
ロッカーを出ると、真っ黒にストライプのスーツを着たゆきさんが、まさに仕事にせいを出してる真っ最中だった
キャリアウーマンみたい
ビジネスに生きる女
その勇姿を見守った
私も負けられない…!
既存のお客さんはともかく、新規のお客さんもばんばん取らなきゃ
いつまでも、お客さんが来てくれるとは限らないんだから
常に常に、新しく
田舎だからか名刺を作る習慣なんてなく、店から渡された空名刺にみんな自分の名前を書いてお客さんには渡していた
私はそれを最近止めて、自分で名刺やさんに行って名刺を作っていた
スワロのイラストが描かれた、ピンクのキラキラデコ風名刺
ちょっとお値段は張るけど、先行投資だ
それにネイルとか、ネックレスとか、ドレスも…キラキラしたものに囲まれると、自分のモチベーションもあがる
「初めまして、麻衣です」
ピンクのキラキラ名刺を渡す
「うわあ~可愛い子がきたねえ~!」
足りない足りない
もっと、新規開拓しなきゃ
今いる人たちだけじゃ、ゆきさんに追い付かないよ…
「麻衣さんご指名です!」
店長の言葉で入り口を見る
よっちゃん…
彼はいつものように澄まして携帯をいじくりながら、勝手に席に着いた
来てくれるのは嬉しいけど、今は指名が煩わしい
私はよっちゃんから見えない位置に移動すると、店長に耳打ちした
「フリーの席にも回して」
「了解です」
この頃から、じわじわと私は追い詰められていたのかもしれない
相変わらず、ゆきさんは飄々とした表情
キャストに慕われてるわけでもなかったが、数字は叩きだすナンバー1の仕事人間
私は決定的に由美さんとその周りに嫌われていたし、友達だっていなかった
けどゆきさんには追い付けない
ナンバー2という、下から追われ上に追い付けない、がんじがらめな状況に私は焦っていた
キラキラの名刺と笑顔を振りまいてあくせく働くのに、ゆきさんは毎日違うお客さんと喋っている
私はずっとよっちゃんに頼りきりだ
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