16 悪女

目標の7ポイントもこなして、ミスティックの夜は更けていった



さて後は給料をもらって、ナンバー発表



何となく察しはつくのだが、結果を見るまで油断はできない



店長から給料を手渡され、疲れてるのにくどくど話す店長を軽くスルーして更衣室に向かう



もうナンバー順位が貼り出されているはずだ


小走りで更衣室の扉をノックした


壁に貼られた順位表



上から見ていく


1位は…



やっぱりゆきさん



私は…



2位になっていた


とうとう…ナンバー2まできたか…



私は2位という高揚感より、次に目指すのはゆきさんの座だ…という緊張感の方が勝っていた



ふと由美さんを探すと6位で、ナンバーにすら入っていなかった




ふん、所詮由美さんもハッタリだな


エースがいなきゃ、ナンバーにすら入れない女っつーことだよ


よっちゃんのお陰で価格高騰してただけ



私は例え、よっちゃんを失ってもナンバーを維持する自信がある



私にはズバ抜けたエースがいない


どちらかというと、みんな毎日は来てくれないが、決まった週には必ず来てくれる


小金持ちって辺りだ



だからエースがいなくなってもナンバーでいれる自信があるんだ


そもそも安キャバに金持ちなんかこないし



よっちゃんが毎日きて売り上げを貢献してくれるが、金の出どころはわからない


仕事も土方をやってると言っていたが、それだけで毎日お店に来れるとは思えない


他に仕事をしてるか、借金でもしているか…



よっちゃんは無理をしている

だからこのまま、エースが長く続くとは思えない



ゆきさんに追い付くには、ハッタリのエースではなく本物の金持ちを捕まえなきゃいけない


私はナンバー表を睨んだ


ゆきの名前が憎たらしく映る


売り上げの赤いラインがこれでもか、と長く、長く上に伸びていた


待ってて



どんな手を使ってでも蹴落として、私がここの嬢王になってみせる



私にはいつの間にかそんな野心が生まれていたんだ




ゆきさんは孤高の王者だ



お店で親しい友達はいないらしい



いつも1人

するのは、お客さん相手だけ


ビジネスに徹する女だ


そこは共感を持てる


後はどーでもいいけど



スレンダーな体と類い稀な美貌と才能を兼ね備えた彼女は、私から見てもこのキャバクラという仕事が天職に思えた



お客さんのリピート率


貢ぎ物率


支持率



ダントツナンバーワンだ



まさにキャバ嬢になるべくしてなった女




私もそんな女に…



いや



それ以上の女になる


彼女以上の華やかさと



彼女以上の美しさと



彼女以上の賢さと




真新しいシルバーの高いヒールの靴



新しく塗ったホワイトと豹柄のハンドとフットネイル



サテン地のベアトップのミニドレス



お気に入りのシャネルのネックレスを着けたら、鏡には、やっぱり可愛い私


ゆきさんが美人で綺麗なら、私はベビーフェイスの可愛い系だ


ファッションもそうだけど、私がゆきさんのようにかっこいい格好や綺麗な格好をしても、ギャップで痛々しく見える

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る