12 悪女

またその話だ


みんな将来、将来って



何をしようが私の勝手じゃないか


私の自由でしょ?私の人生なんだから

一生に一度きりなら自分の好きなことをして死にたい


それで野たれ死んでも悔いはない


後悔する人生ばかり歩んできたんだ

自分の将来くらい好きに生きさせてよ



「居酒屋なんてバイトしてないで、ちゃんとした正社員の仕事しなさいよ」



うるさいうるさい

耳が痛い



耳が痛い…?



「今、履歴書を色んな会社に送ってるんだけど、エントリーの段階で弾かれちゃうみたいで、なかなか面接まで行かないんだよね、やっぱ不景気っていうか、会社も即戦力が欲しいみたいね」



言い訳をする時ばかり、知ったかぶりして饒舌になる。履歴書なんか送ったことないのに



「じゃあママの会社でバイトする?」



あっ

そいやあ麻衣の両親は自営業だった



「い、いや、自分の力でなんとかしたいし、もういい大人だからさ!」



麻衣の母親は口をへの字にしたままだ




いい大人だったらとっくに就職して働いてると思うけどね



別にいいじゃん居酒屋だろうとキャバクラだろうと



それを居酒屋なんて、って言い方をするのは職業差別だろ



居酒屋で働いてるやつもキャバクラで働いてるやつも、あたしのような実家暮らしのちゃらんぽらんばかりじゃなくて、一生懸命働いてるやつもいる

それで生計立ててるやつもいるんだ、居酒屋だろうがキャバクラだろうが給料もらってる立派な仕事じゃないか



だけど、友達や母親にキャバクラで働いてますって面と向かって言えないのは何故だ?



耳が痛いのはなんで?



「どうしても苦しくなったらお母さんに頼るよ」



そういうとリビングを出た



部屋に入ってベッドに倒れこむ


キャバクラで働いてるって言えないのは、耳が痛いのは、自分自身が一番それを自覚しているからだ




キャバクラなんて、ってね




結局は、私も麻衣の親や、私の周りの人間たちと同じなんだ

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