7 悪女
そう思うと急に自分のカバンがダサく思えた
シンプルで、一見ブランドとはわからない深紅色のクロエのカバンが憎たらしく映る
そうさ、私は所詮、ミーハーで見栄っ張りなセンスのないブサイク女さ
ブランドマークが付いてると安心してしまう貧乏性だよ
中身が入れ替わったなら、脳ミソも変わってくれればよかったのに
なんだよヴィトンなんて
カッコがつくブランドが有名ブランドしか知らなかったんだよ
むかつく
私はお客さんに買ってもらった青いキラキラのビーズが沢山着いたドレスを着た
また女の子たちが騒いでいたが、そんなことより今日に限ってゆきさんはシンプルな真っ黒のドレスを着ていた
それがより私をムカつかせた
ごてごて着飾るしか脳のない私をバカにされてるみたいで
まあ被害妄想だけどね
席に戻ると由美さんが笑顔で出迎えてくれる
よく見ると彼女のタバコケースは白のダミエだった
ネイルはスワロが沢山付いたごてごての魔女みたいな爪をしていた
こういうのを趣味で身につけてるやつに褒められても、程度が知れてるなと気付いた
つまり私の趣味じゃないのだ
私はその日もお客さんに代わる代わる着いた
「かわいーねー!君みたいな子が彼女だったら毎日俺、家に帰ってくるよ!」
毎日ごろごろと豚のように太った奥さんの尻に敷かれた男の姿が、男の背後に霞んで見えた
きっと上にこき使われ下にせっつかれ、ぼろ雑巾になりながらくたくたで帰ってきたところに、さしずめ遅いだのなんだのギャーギャーピーピー言われているんだろう…可愛そうに…
結婚しても自由を奪われ惰性に生きる男の姿
それが楽なら構わないのだろう
私なら人に従い、飼い馴らされ、尻に敷かれる生活なら真っ平ごめんだ
だったら私は、責任がついても、自由を右手にかざすよ
でもそういうお客さんは格好の餌食だ
女によって飼い馴らされている男は、人の機嫌を見て従うのに慣れているから比較的簡単に場内が取りやすい
勿論、簡単に場内をもらった
お客さんが帰った後店長が嬉しそうに話し掛けてくる
「やったね、場内!さすが麻衣さん!着けてよかった~じゃあ次はあそこの席行こうか!」
指定された席は、4人グループの席で、割と若者だった
私は正直若者はちょっと苦手で、テンションに着いていけない時がある
何しろ若者なので、おじさんよりお金も持ってないことが殆どだからケチ臭いし、次に繋がる可能性が低いように感じる
案の定、そのテーブルはドリンクも出ていなく、男4人でカラオケを歌って騒いでいた
指定された席はリーダー格と思われる男の人の隣で、さっき席に着いてた時チラ見していたが、つく子つく子にいちゃもんや罵声を浴びせていて、トラブルメーカーっぽかった
「ご紹介します、麻衣さんです~!」
店長の紹介で席に着いた
よし、明るく、笑顔で…。
「こんばんは、麻衣です、あ~寝てる~」
女の子をいじり疲れたのか突っ伏していた男に声をかける
ばっと男が顔をあげて目が合った
「わあ~やっと可愛い子きたあ~!」
男は周りの男に言って笑いを誘っていたが、そこに着いてる女の子は目すら笑っていなかった
質問されたり答えたり、質問したり、普通の会話をしながら頃合いを見てドリンクをおねだりする
「いーよー全然飲んで!」
今まで全然出ていなかったドリンクだったが、いさぎよく出してくれた
「ありがとうございます、みんなもいいですか?」
「あー!みんなは各自となりの男に聞いて!」
結局私以外ドリンクは出なかった
お会計もそのリーダー格が全て払っていた
「ずっとブサイクばっか着けてさ、ここのボーイ!嫌がらせかと思った!麻衣ありがとな!」
男は笑顔で帰っていく
「ごちそうさまでした」
またすかさず店長がやってきて嬉しそうに褒めてくれる
「麻衣さん、さすがだね!ドリンクが一杯も出てなかったのに出すとは」
私は軽くかわしながら待機に戻ろうとした時、先ほどの4人グループに着いていた女の子3人が固まってなにやらこそこそ話している
私と1人が目が合うと思い切りそらされた
…何?
感じ悪い態度が気になったが、考えないようにした
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