7 悪の華

「じゃあ待機に行ってていいよー」


ことさら気にかけることなく、ボーイさんが義務的に言う



待機席に戻る途中、1つ前に着いた30代の当たり障りない会話をしたところが、私の次に着いた女の子を場内していた



会話は私の時と違って盛り上がってるように感じた



嫌なことは重なるようだ



私は憂うつになり、早く今日の出勤時間が終わらないかため息を着いた



「いらっしゃいませー!」



待機に着いた途端、ボーイさんが恭しく入ってきた後に、気の弱そうな男と、私の後に入店した可愛い女の子が同伴で出勤してきた



「じゃあ麻衣さん、由美ちゃんの同伴の人のヘルプいいかな」



私と彼女の違いは何だ…?




「麻衣」になっても、私は麻衣みたいにいつまでたっても、みんなに愛され、人気者になることはなかった



それはあれだ、見た目だ


ゆきさんや麻衣のような美貌っていうか、華が、私にはない



なんの面白味のない性格で不細工って、ただの平凡だろ



そりゃあ、人気もでないわ

人並みのことしてれば



私には何も特徴がない


ああ…フラストレーションが溜まる…


美しく生まれたかった

いや美しくなりたい



そしたら今目の前で、美味しそうにシャンパンを飲んでる、低学歴なバカでも人より勝る美人ならばそれも許されるのだろう


無能でバカで苦労知らずな美人が、心底羨ましい




かといって整形する金も度胸もない



コンプレックスをカバーできる、何か特徴や特技が欲しい


私には、何もない


「麻衣さん、ゆきさんのヘルプ着いて」



腹に重い鉛が落ちる



金がよくて華やかな世界だと思っていたところは、一部のやつだけの特権で、後は今まで以上の劣等感の塊だった


私はどこにいっても、さえないままなのか


ゆきさんのヘルプに着いて、一緒にラストを迎えた



帰りのロッカーで、着替える


空間には私とゆきさん2人きり



私はおもむろに、思ったことを口にした



「ゆきさんってお客さんもいっぱいいて、稼いでますよね、羨ましいです」



ゆきさんは着替えながら言う




「まぁね。でも最初から稼げてたわけじゃないよ、みんな0からスタートだからね」


否定もせず、あっさりと肯定する度胸

ゆきさんの言葉には、あらがえない説得力がある


そうだこんな美人でも、最初はお客さん0だったんだ



「そうですよね、私もゆきさんみたいに稼ぎたいな…」



ゆきさんは手を止めてこちらを見た



「向き、不向きがあるからね。営業メールはしてる?たまにといわず、毎日でも送った方がいいよ、可能性が増えるから。あと今月は何本まで取るとか、自分で目標決めた方がいいよ、それで成績が上がらなきゃ…向いてないかもね」



事もなげにいい放つとロッカールームから去って行った



ムカつく…


でもかっこいい…


私はめまいがした




きっと彼女の魅力は、その飾らない性格だ


美人で、媚を売らず、ありのままの自分で生きている


誰かを真似て、飾って誤魔化している私

だからなんとなく自分に自信が持てない


その羞恥心と劣等感で、常に何かに怯えながら後ろめたさを抱え、地面を見る生き方しか出来ない私



私もゆきさんみたいになりたい…



向いてなかったのかなキャバクラなんて…


私はとぼとぼと家路に着く



すると携帯のマナーモードが激しく振動した



みると麻衣からだった


「もしもし」



「もしもし愛?今から会えない!?」



「…別に大丈夫だけど…どうした?」



「会ってから話す!じゃあ駅前で!」


私は駅前へ向かった

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