4 悪の華
「なんでキャバクラしようと思ったの?」
お金がいいから…
そう答えを言おうとして喉元で止まった
バカ正直に言ったらこの人はどう思うだろうか
彼は常連だとボーイさんが言っていた
つまりキャバクラが好きだから来てるんだ
なんで好きだから来るのか…そんなの簡単だ
彼は夢を見ているんだ
キャバクラという所で、キャバ嬢たちの夢を買っている
どんな夢を見にきているか分からない
だけど、私は今、夢を叶える魔法使いだ
お客さんが望むなら叶えてあげたいと思う
誰も傷付かない
優しい嘘を
「私、夢があるんです」
「どんな?」
「…調理師になりたいです」
「へえ!すごいじゃない、それで?」
おじさんは身を乗り出してきた
「それで、調理師免許ほしくて、昼間ファミレスで仕事してるんですけど、その、なんていうか給料悪くて…」
「それでキャバクラか…」
「はい…資格のお金欲しくて…兼業って感じですね」
「すごいね、夢を持ってるなんて!僕なんかやりたいことなかったから就職出来るとこに就職して、今もそこでただ働いてるだけ。なんか目標とかある人ってすごいと思うよ」
おじさんは感心したようにうなずいていた
…調理師になりたいなんて微塵も思ってない
麻衣の夢をそっくりそのまま語っただけだ
嘘なのにおじさんは信じ切っている
「しっかりとした信念をもって前に進めば、必ず目標は叶うよ、応援してる」
「…ありがとうございます」
「今日は久々に楽しかったよ!また来るからよろしくね」
「はい!」
その後、何人かのお客さんに着いて営業が終了した
「今日はどうだった?」
店長が話し掛けてくる
「はい、最初は緊張したけどお客さんもスタッフさんもみんないい方で安心して仕事できました」
適当に煽てる
「そっか、続けていけそう?」
「はい、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
こうして私はこのお店「ミスティック」の一員になった
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