2 悪の華

そしていつしか誓ったんだ

麻衣のお飾りじゃなく、自分の力で人気者を勝ち取ってやると


私は誰かの供え物の人生じゃない


ヒロインなんだ

自分が主役演じなくて誰がするんだよ

私は中学を卒業と同時に卒業アルバムを破り捨てた

そして、私の中で、悪の華が芽吹いた


麻衣は調理師になりたいと調理師の資格が取れる私立の高校に行った


私は金銭的な理由で公立だったため、ヤンキーとオタクしかいないバカな底辺高校にしか行けなかった

さらっと卒業した私は、すぐ働き始めた


高校のバイトでやっていた工場仕事が今の就職先みたいになっていたが、驚くほど安月給なのはバイト時代と変わらなかった

そんなある時、駅前でやる気のない兄ちゃんが配っていたティッシュに目が釘付けになった

ホールキャスト大募集

時給1800円

気付くと電話をして、面接に向かっていた


そこはキャバクラのお仕事

お金も沢山もらえて、キラキラ輝ける場所


もちろんなんとなく理解して電話した

胡散臭さより給料の魅力が勝ったから

人が落ちるのは簡単だ


店から借りた衣装を着て、似合わない髪型にされて、接客を始めた


周りの女の子を盗み見るが、みんな並みの顔立ちで、いかにもキャバ嬢みたいな子や可愛らしい顔の子はいなかった


働いている子はみんな素人で、アルバイトなのだ

そう確信すると、さっきまでの緊張は幾分収まった


待機席に案内され、店長が自己紹介をする

「麻衣さんです、みんなよろしくお願いします」

返ってきた返事は疎らで後はお辞儀を軽くする人と、無視して携帯に夢中な人と半々だった


座ったソファは擦り切れて白地が黒ずんでいた

机は木製で所々欠けたり割れたりしている

壁に目をやると、そこも壁紙が剥がれたり破れたりしていた


だらしない店


女の子のレベルと店のレベルは比例するようだ


そんな店で1人キラキラしたドレスをまとった女がいた

周りがペラペラの生地の薄いドレスばかり着ているせいか、その女がまとっているビーズの真っ白いドレスが、一際目立っていた

目が合う

息を飲んだ


それはドレスの違いだけではなかった


顔も周りと格段に違ったからだ

整った眉に二重の瞳、意地悪そうな尖った鼻に濡れた唇

一つ一つのいいパーツが一つにまとまったらこんな顔になるんだなという、まさに雑誌やモデルのような顔立ちをしていた


こんな田舎にこんな美人がいたなんて


その女は期待を裏切らず、私なんかどうってことないように、合った視線をそらした

なんか、高飛車な女


お前も麻衣みたいな勝ち組グループだろう


私のような人種と違って、劣等感もたいして味わったことないんだろうな


ドキドキする


嫉妬と羨望が入り交じった汚い感情

あああ…、変わりたい

私は私の人生を生きる

もう誰かの供え物じゃない

そのためにもここで輝くんだ

私は「麻衣」

可愛くて、人気者で、みんなに愛されてるアイドル


そう、女と同等の立場にいくんだ


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