ヒトリ旅からふたり旅へ
「あっ…」
まさか継月さんたちも同じ電車に乗ってくるとは思わなかった。ってことはそりゃミライさんもいるよな。まって、まってまってアードウルフ撫でてるのバレた。どうする?怒られる?とりあえずアードウルフさんの頭に体重がかからないように軽く腕を組んだ。
継月さんと軽く会話をし、黙り込む。隣をちらっと横を見ると蛍光色の髪の毛が視界に入る。隣はミライさんか…と思ったのも束の間、彼女と目が合う。『あの言葉』を思い出し身の毛がよだった。
「あの…」
「は、はい。な、なんでしょう?」
「今の平城山松前さんってどことなく初めて会った頃のアードウルフさんに似てるんですよね。」
「そ、そうですか。」
「もしかして…何かに怯えてます?」
はい、あなたに。なんて言えるはずもない。どうしよう。
「さっき、アードウルフさんをなでてましたよね?」
バ レ て た 。
「え、あ、いや、これは…」
「よかったですね!アードウルフさんは臆病で警戒心も強いのでこんなことはなかなかないんですよ!」
「…え?」
「しかも会って2日目なんて!これもアードウルフさんがあなたを『ちゃんと信じた』結果ですね!」
その瞬間あの時のことを思い出す。リウキウでミライさんがアードウルフさんに言っていたあの時。
「…!!」
「平城山松前さん?そんなに急に震えてどうしたんですか?」
「あ、あぁ…いえ、なんでも…な」
「まさか私に怯えてます?」
「あ、そ、そんなこと…」
頭が真っ白になる。何も言葉が思いつかない。とりあえず何か言わなきゃ。
「ミライさんに『お前がアードウルフさんに変なことをしでかしたらただでは済まさないぞ。』と言われて…何が良くて何が良くないのかがわかんなくて…何も自分からできなくて…」
「…?私はそんなこと言ってないと思いますが。」
「あ、ご、ごめんなさい。」
「ん?どうかした?」
自分の怯え様が酷かったのか継月さんも会話に混じってきた。
「実はかくかくしかじかで。」
「なるほどね。ねぇ松前くん?」
「は、はい。」
「今ここにいるのは赤の他人だ。君の家族が何人で、友達はどんな人がいて、普段はどんなことしてて、なんて誰もわからない。なら、恥ずかしがらずにいろんなことを聞いてみてもいいんじゃない?」
「…」
「あ、節度は守ってね?」
「も、もちろんです!」
「でも、『撫でてみたい』とか『手を繋ぎたい』くらいなら多分良いって言ってくれると思うよ。アードウルフ、結構優しい娘だから。」
ふと自分の膝に頭を乗せてるアードウルフさんに目を落とす。確かにアードウルフさんはとても優しいかただ。こんな小さな体で、臆病な性格で、でも自分を変えようと必死に頑張っている。それなのに僕は…
「だから『聴いてみてOKならしてみたらいいしダメなら潔く諦める。』で、いいんじゃないかな。」
これか、これがアケノの船に乗る前にコウテイさんに教えてもらったことなのか。
「…!はい!」
「フレンズさんたちは本当に可愛い子ばかりなのでいっぱいふれあって楽しんでください!そのためのツアーですから!」
「わかりました!」
そんなこんなで拠点前の駅に着いた。歩いて行っても集合時間には余裕で間に合う。ミライさんと和解…と言うよりただ一方的に怯えてただけだけど…した。はず。たぶん。眠たげな目をこすりながら歩くアードウルフさんの手を握り肩を並べて歩く。
「お待たせしました。」
『
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