またやーたいリウキウ

「あ!これがシーサー道場ですかね?」


 アードウルフさんが指さした先にあったのは確かにシーサー道場だった。でもこの建物の何処で待ってれば…?この門潜っていいの…?なんて考えているとシーサーの二人が出てきた。


「おー、みんな早いね!」

「さあ中に入って!」


 中に入ると風庭さんのペアがもうすでに待っていた。


「あ、風庭さんどうも。」

「お久しぶりです。平城山さんもこの企画に応募していたんですね。」

「なんか知っている人がいると安心できますね。」


 なんて雑談していると継月さん御一行が来た。継月さん達と少し話していると、シーサーさんたちが沖縄の民族衣装に着替えて出てきた。


「ところで他の方々は?」

「まだ着いてないよ。」


 確かにもう時間にはなったが3ペアも遅れていた。マジかよ。


「おいおいおいおい!あいつらしょっぱなから遅れてるのかよお!?」

「サーバルや次点でキタキツネはもしかしたらと思ったけど…コウテイまで遅れるのは想定外だったな…」


 どうなるのか不安に思っているとコウテイさんとタコ…さん?どう呼べばいいかわからないけど…が来た。走ってきていたようで汗もダラダラで息も上がっていた。


「すみません…遅れ…ました…」

「いいよいいよ。寧ろ5分なら誤差の範囲内だから。」

「怒ってないのか?」

「まぁね。リウキウタイムって言って、沖縄ではこういった集まりには少し遅れるくらいがちょうどいいのさ。あくまで11:50ってのは集合する時間の目安。それに、前もってゴコクで待ってるフレンズには予定より一時間くらい遅れるかもと伝えてあるし。」


 流石に余裕を持って行程コウテイを組んでいたんですね、よかった。…あっ、これは、その、ちがっ、狙ってなくて、


「ただし、二人とも他のエリアではちゃんと時間までに来てくれよ?」


 二人はうなづいたように見えた。そこからの会話は遠くてよく聞こえなかった。


「結構遅れてくる人多いんですね。」

「アードウルフさん、実は風庭さん以外面識ないんですよ。」

「あれ?てっきりなにかの集まりだと思っていたんですが…」

「す、すみませ~ん…遅れました~…」


 声のした方を向くと、澄まし顔のキタキツネさんと何故か海藻まみれのペロさんが到着していた。どうしてそうなった。


「ちょっ、一体どうしたのその格好!?」

「キタキツネと海ではしゃいでたら思いっきり海にダイブしました…」

「と、とりあえず着替えよっか。」

「念のための着替えがあるので、あちらでそれに

着替えましょう。」

「すんません…」


 ペロさんはミライさんに連れられて道場の中へと向かっていったがキタキツネは付いてはいかないようだった。


「あー!やっぱりみんなもう着いてた!ほら、けもちゃん早く早く!!」


 またもや門の方から声が聞こえた。案の定サーバルさんとけもさんだったのでやっと全員が揃った。


「ビリっけつはサーバルか~。」

「みんな待たせちゃってごめんね!リウキウは

久しぶりだったし、楽しくなっちゃって…つい。」

「まぁいいけどさ。次のエリアからは気をつけてくれよ?」

「うん!わかった!」

「はい…」

「さて、メンバーもこれで出揃ったし、あとはペロくんが着替えから戻ってきたらお昼といこうか。」

「ねぇねぇ、そういえばあんかけちゃんは?ロードランナーと一緒じゃなかったの?」

「そう言えば…。継月、あんかけはどこだ?もしやあんかけもペロと同じで着替えてるとか…?」


 確かに。他人に興味がないから全く気づかなかったけど一人足りない気が…


「どうも、体調が悪くなっちゃったみたいでさ。大事を取って先に帰したんだ。今はセントラルへ向かってる頃じゃないかな。」

「そっかぁ…。あんかけちゃんとも旅したかったなぁ…」

「んまぁ仕方ないさ。また遊びにくるかもしれないしそんときにこの旅の土産話でもしてやればいいさ。」

「うん!そうだね!」

「すんませーん。お待たせしました~!」


 ペロさんはジーパンとジャパリパークのロゴが入ったシャツに着替えて戻ってきた。


「よし、これで全員揃ったね!」

「それじゃ、お昼にしましょうか。」


 ちょうど腹が減ってきていたのでその提案に乗らない手はないな。


『いっただっきまーす!』


 白米や味噌汁はもちろん、にんじんしりしりも母親が作ったものなら食べたことがあるが、こちらの『本場の料理』はどういう味なのだろうか。

 テーブルは二つあって、タコさん、コウテイさん、ペロさん、キタキツネさん、僕、アードウルフさんの六人で一つの卓を囲んだ。食べ始めようとしたその時アードウルフさんが喋り始めた。


「あの、これお肉……、ですよね?これ……食べちゃっていいんでしょうか?」


 確かにそうだ。今無意識にその『料理の魅力』に惹かれ箸をつけようとしていた自分が末恐ろしくなった。


「フレンズさんは……どうなんでしょうか?」


 喋り終えふと横を見ると先に喋ったアードウルフさんが僕よりも色を失っていた。自分より焦っている人を見るとなぜか落ち着けるアレが作用したのかはわからないけど少し落ち着いた。アードウルフさんを何とか落ち着かせようとしてると継月さんが口を開けた。


「食というのは動物を、命のなんたるかを知る上では欠かせない、避けて通ることの出来ない要素の1つだと、俺は思ってます。それにそもそもの話、食物連鎖はこの地球に生命が生まれた時、何十億年も前から行われてきた、極当たり前の事。自然の摂理なのですから。」


 口の中の物を一度なくしてからフルルさんがさらに加えた。


「あの時の継ちゃんすごかったんだよ。動物愛護団体やヴィーガンって人達の返答にもしっかり回答札を用意して切り返してたもん。」

「ですから、安心して食事を楽しんで頂いて大丈夫ですよ。」


 そっか、野生の世界でも「食べる」行為は「命をいただく」行為に他ならないから…なるほど。

 リウキウで食べたものは母親が作ったものとは風味が違うように感じたが、こちらも箸が止まらなくなった。




 昼御飯から10分程の小休止を取り、シーサーさん達と共にリウキウに来た時の港へむかった。皆で別れを告げるとクルーザーに乗り込んでいった。


「…11…12…13…OK、全員いるな。ラッキー、出してくれ」


 継月さんが全員乗り込んだのを確認すると船が動き始めた。


『次ノ目的地ハ、ゴコクエリアデ良カッタカナ?』

「あぁ、頼む」

『オーケー。ゴコクエリアへ向ケテ、発進スルヨ』


 エンジンが掛かり、クルーザーは次の目的地であるゴコクエリアへと向かう。


「あっ!ねぇみんな、外!」

「んっ?」


 サーバルさんが外を見て大声を出すもんだから何かと思ったがこっちからだとよく見えなかった。一体なんだったんだろう。まあいいか。

 僕はリウキウに来る時に寝てしまったのでここでは寝れず、アードウルフさんに今度は僕の友達のことを聞かれたので話しているといつの間にかゴコクエリアの港に着いていた。

 僕達が降りたあと、ドアが閉まりクルーザーはどこかへと向かっていっていた。


「では、ここからホートクエリアまで移動は全て

バスで行いますので、あちらのジャパリバスにご乗車下さい。」


 ミライさんの向けた手の先には一台のジャパリバスと緑色のラッキービーストが待機していた。全員が乗り込み、継月さんが点呼を取った。


「ラッキー、一先ずギョウブ大社まで頼む」

『分カッタ。皆、安全ノ為二シートベルトヲシッカリ締メテネ。ジャナイト発車出来ナイヨ』


 言われる前にすでにシートベルトを締めていたがその締まる瞬間の「カチッ」という音にびっくりしたのかアードウルフさんが固まってしまっていた。僕が代わりに締めたが、僕がもたついてしまったために結構時間を食ってしまった。実際は予定通りの発車だったらしいのだがどうしてもそれが嘘としか考えられなくて…


『大丈夫ダネ、ソレジャア出発スルヨ』


 皆さんを待たせてしまったことがどうしても頭から離れず、どう挽回しようか頭を悩ませているとアードウルフさんがまた話しかけてくれた。


「さっきのシートベルト、ありがとうございます!」

「いえいえとんでもない。大丈夫ですよ。」

よかった…嫌われてなくて…

「どうされました?」

「な、なんでもないです。ところでゴコクはどこか行きたいところありますか?」

「はい。『どうしても行きたい場所』があるのですが、もしかしたらアードウルフさんはつまらないかもしれません。それでもいいですか?」

「大丈夫ですよ。あなたの好きなものも知りたいですし。」

「ありがとうございます。」


 また話しかけられてしまったし、その上事務的な会話しかできなかった。さらに小声の部分は何を話しているか全くわからなかった…嫌われてないかな…

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