めんそーれ!りうきう!

 もうすぐリウキウに着くということなので準備をして周りの人に合わせるように流れで船を降りて行った。


「「ちゅーがなびら!」」


 青と赤のコントラストが映える二人のフレンズが出迎えてくれた。


「みなさん紹介しますね。このリウキウエリアの守護けもののシーサーレフティさんとシーサーライトさんです。」


 その一言を聞いた瞬間僕の頭の中はハテナでいっぱいになった。え?あのシーサー?あれもフレンズになるの?


「皆よく来たね!」

「めんそーれ、歓迎するわ!」

「はいさいレフティ姉、ライト姉。」

「はいたい、継月。」


 継月さんはこの人たちとも知り合いなのか…?一体どんな人なんだ…?


「今日はよろしくね。」

「こちらこそ、いっぱい楽しんでいってね!」

「じゃあ二人とも、挨拶をお願い。」


 シーサーのレフティと呼ばれたフレンズとライトと呼ばれたフレンズが参加者へと視線を向ける。


「改めてこんにちは、ここの守護けものを任されてるシーサーライトと」「シーサーレフティよ。」

「ここリウキウエリアには、本土で言うところの沖縄に生息するフレンズが多くいるんだ。近くのビーチでリウキウの海を肌で感じたり、今回特別にオープン前の水族館を解放してるからそこを見学するもの良いかもな。」

「あとは、このリウキウにしかない食べ物もあるからそれを食べて回るっていうのも手よ。」


 そう言い終えると何故か不自然な間があき、徐にライトさんが口を開いた。


「そうそう。そういえばリウキウには『いちゃりばちょーでー』って言葉があるんだ。」


 いちゃりばちょーでー?『いいチャリが売ってある場所ばちょです』って意味…なわけないか。実際は『出会った人とは兄弟のように仲良くしようね』って意味らしい。


「つまり!」

「リウキウで繋がる、人とフレンズの!」

「「大きな輪!」」

「「はい!ライトじゃー…ないと!」」


 一体何が起こったんだ…?いきなり継月さんとライトさんが体で輪っかを作ったと思えばなんか決め台詞みたいなのを決めてきて…?


「いまのは、繋がりという意味の大きな輪とリウキウの今の言い方の沖縄を掛けたホットなジョークだよ~」

「「だぁー!ギャグを説明しないでー!」」


 不意打ちすぎで吹き出さずにはいられなかった。やっぱりこの人は芸人なのか…?アードウルフさんも今のには耐えられなかったようだ。


「うんうん!やっぱり笑顔が一番!私たちからの挨拶は以上だ!それじゃあ、リウキウを楽しんでね!」

「では、シーサーのお二方からの挨拶も終わった所で、ここからは自由行動になりまーす。12:00に昼食を取りますので、11:50までにシーサー道場に集まってきてくださいね~。では、解散!」


 みんなが解散していく中アードウルフさんは怖がっていることを表に出さないように我慢していて、その限界に達していたのか一目散にミライさんへ駆けて行った。


「ミライさん!あの方は本当に大丈夫なのでしょうか…?」

「選考には通っていますから大丈夫だと思いますよ。それとも『あのスザクさんが悪人を見逃した』と考えたのですか?スザクさんの力を信じていないのでしょうか?」

「あ、いや、そんな訳じゃ…」

「ならいいんです。不安なままでもいいですからせめて彼を『信じて』みてはいかがでしょう?」

「…はい!」


 ミライさんの声がギリギリ届く範囲にいたけど僕にはあれはアードウルフさんを立ち直らせるための言葉とみせかけた僕への忠告のように聞こえた。『お前が変なことをしでかしたらただでは済まさないぞ。』と。

 その言葉を受け僕の方へ戻ってきたアードウルフさんはあの写真とは違う堂々とした目をしていた。そしてアードウルフさんは口を開けた。どんな言葉が来るのか待つしかなかった。


「先程はごめんなさい。ところで、リウキウで行きたいと思っていた所はありますか?」

「リウキウに関しては…ノープランですね。」

「なら、おすすめのスポットがあるのですが一緒に行きませんか?」

「いいですね!行ってみたいです!」


 また話しかけられることを待ってしまった。これで2回目だ。大学の友人も『話しかけられる』ことで友達になった。私はこの旅で『自分から話しかける勇気を持つ人』になりたい。この時からそう思うようになった。

 そうしてアードウルフさんのガイドについて行くことになったが、ふと気づくと手を握られていた。アードウルフさんのやわらかな手は僕の手を優しく、か弱く、しっかりと握っていた。


 十数分森の中を歩くといきなり開けた場所に出た。


「着きました!私もここには来てみたかったんですよね…!」

「ここは…ただの草原?」


 着いたのは森に囲まれた草原。真ん中に緩やかな丘がある以外は特筆すべきものはないようなそんな普通の草原。


「ここに寝っ転がって空を見ると綺麗だって友達から聞いてて…」


 確かに今日は雲一つない快晴だ。僕も久しぶりに草の上で大の字になってみるか。


「本当だ…」

「ここを知ってるフレンズはそんなにいないんですよね…私とその友達くらいかな…」


 そういえば道中にもフレンズはあまりいなかったしここにも人気…フレンズ気?はない。


「次に教えるのは『私の新しい友達』って決めてたんですが…あなたに教えることになっちゃいましたね。」


 爽やかな風が吹き太陽の光を浴びてすっかり気を抜いていた僕はそう呟くアードウルフさんに何も反応できなかった。そうして穏やかな時間が過ぎ集合時間が刻一刻と近づいていた…

 先程シーサーの道場がどこにあるか把握するためにしおりのリウキウの地図のページを確認したが、この丘のことが書いてあった。ここからその道場までどう行けばいいのかはわかったが、しおりに書いてあったことは黙っておこう。


「そろそろ集合場所のシーサー道場に向かいませんか?」

「そうですね。時間もいい頃合いですしそうしましょう。」


 道場へ向かう道ではアードウルフさんやその友達について目を輝かせながらたくさん話してくれた。正直、とても可愛かった。

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