いざリウキウへ!
「改めまして皆さん、おはようございま~す!」
元気よくみんなが返事をする中、僕はさっきのことが気がかりで難しい顔をしていた。そのためか少し聴きそびれた部分があったが多分旅に影響はないだろう。多分。
「…ここまでとしまして、今回の企画の主催者であり園長の継月さんに旅のプランを説明して頂きましょう!お願いしまーす!」
「主催者ってどっちかって言うとこの話持ってきたミライさんじゃないかと思うんだけどなぁ…まぁいいや。改めまして皆さん、おはようございます。」
今度こそ返事をしようとしたが一回目も返せなかったんだし二回目も返さなかったところで何も変わらないのではと気付いてしまったためかスルーしてしまった。
そんな自分の不甲斐なさをひしひしと感じていると継月さんとミライさんがすごいことを言っていた。
「…後日皆さんからの応募書類が届いたんですけど…その時は慌てた様子でミライさんが持ってきたものだからどうしたのかとその書類の束を見たら…ミライさんあれどのくらいありましたっけ?」
「少なくとも百…は行ってましたね。」
百…!?それなら僕より良さそうな人なんかごまんといそうだか…なんで選ばれた?
「…早速ですね、今回の旅のプランをご説明いたしますけども、皆さん事前に配布したお手持ちのしおりにあるスケジュールをペアのフレンズとご覧ください。」
すぐに三角ショルダーの中からしおりを出し、アードウルフさんへと見せる。昔中学生の時に隣の教科書忘れた女子に自分の教科書を見せた時を思い出した。その時と同じように今も緊張している。
「1日目となる本日はまず、ここキョウシュウから私達の用意したクルーザーに乗船して頂いて、そこからリウキウへと向かいます。そしてリウキウ到着後、そこを納めている守護けものからの軽い挨拶を挟んでそこからは自由行動をして頂きます。そのエリアから出たり立ち入り禁止区域に入りさえしなければ基本的には何をして貰っても構いません。文化に触れるもよし、現地のフレンズと戯れるもよし、現地の食を楽しむもよしです。」
「因みに各ペアにカメラをお渡ししましたけどこちらでフォトを撮っても?」
「もっちろんオッケーです、その為にお配りしたものなので。…あっ、ただ大丈夫だとは思いますけど、モラルとかは守ってくださいね?そこんとこお願いしますよ?因みにそのエリアに何があるのかとか各エリアごとのデータはそのしおりに大方書いてあると言うより私とミライさんの方で現状出来そうな事とか全っ部現地行って調べて書き記したんで、良ければですね、行動プランの参考にしていただければと思います。
そうしましたらお昼を挟んで13:00頃、ゴコクへと向かいます。ゴコクでもリウキウと同じく守護けものからの軽い挨拶の後自由行動、コゴクで一泊した翌日バスでアンインへ向かい…と言ったようにホッカイエリアまで北上する形でパークの各エリアを周っていきます。
予定としましては、本日一日目は先ほど言いましたがリウキウとゴコク、翌日二日目はアンインとサンカイ、三日目はナカベとホクリク、四日目はカントーとホートク、五日目はホッカイと1日で二つのエリアを回り、最後はホッカイからこのキョウシュウに戻ってきて、キョウシュウを回ったらこの遊園地で宴会をしてロッジに泊まり、翌朝解散…という5泊6日の旅行企画となっております。
では皆さん、是非フレンズのみんなとの楽しい一時をお過ごしください。以上で、私からの挨拶とさせて頂きます。」
なるほどなぁ…それぞれのエリアではいれても半日か…
「はい、ありがとうございました。それでは最後に、現在は主にこのキョウシュウエリアの守護を務めておられますスザクさんからのご挨拶で終わりたいと思います。スザクさーん、お願いしまーす!」
と言っても近くに「スザクさん」と呼べそうな人は見当たらないだが…と思ったその瞬間、なんと上から降りてきた。まあ四神だからなぁ…
少し継月さんと芸人みたいなやりとりを挟んだがその荘厳さは失われてはいなかった。
「皆のもの、よくぞこのジャパリパークに来てくれたのぅ、歓迎するぞ。我こそは、ジャパリパーク南方守護者のスザクじゃ。昨日ミライからも話されたと思うが、このジャパリパークでは、皆がパークの外にある『どうぶつえん』とやらで見慣れた動物のフレンズやまだ見たことのない、知らない、そして本来触れ合う事すら不可能な筈の動物のフレンズもおる。是非とも、そんなフレンズ達と心通わせ、良き楽しい思い出を作ってくれたら幸いじゃ。」
その直後いきなりオーラとプレッシャーを放つ表情になった。い、一体何が…
「とはいえ、自然やフレンズを無闇に傷付けるような粗相はするでないぞ。お主らなら大丈夫だとは思うがのぅ。昨晩も、フレンズを連れ去ろうと考えると不届きな輩が忍びこんでおったからの。」
スザク様がそうおっしゃった直後、さっきまで隣にいたアードウルフさんが素早く僕から離れた。ちょうど僕が手を伸ばしてギリギリ届かないくらいの距離まで離れた。怯えた表情でこちらをみる目には涙を浮かべていた。
それをみた僕は「安心して」でも「そんなことはしないよ」でもなくただ眺めて何も言わずただ共感していただけだった。こんな人相が悪くこんなひょろ長い奴がさっきまで考え事で顔をしかめていたんだから怯えるに決まってる。今ふと思ったが、もしかしたら見惚れていただけかもしれない。
「まぁとはいえ、そやつらは早期に我等が全員捕まえてきっちりとっちめておいたからのう。今頃は本土でお灸を据えられておろう。このパークにはもうおらぬだろうから、皆安心して旅を楽しんでくれ」
とスザク様はおっしゃっていたがそれは無理そうだ。『安心』は僕もアードウルフさんもできていない。
僕はこれからどう挽回しようかと悩みながらとりあえずミライさんについて行った。
〜十数分後〜
ついて行くときも先ほどの距離感のままだった。他のペアは手を繋いだりスキンシップをとっていたが僕にはそんな勇気もなければもし勇気を出して手を伸ばしたところで逃げられるだけだ。なら何もしない方がいい。
「はい!これが今回皆さんが乗るジャパリクルーザーでーす!皆さん足元に気を付けて乗船して下さいね~!」
しおりに載っていた席順で座ろうとしたときにアードウルフさんから声をかけられた。
「あ、あの!席交換してもいいですか?…海の青が怖くて…」
「はい、いいですよ。」
ということで窓側になった。後になって気付いたことだが、もしかしたらサーバルさんと話したかったのかもしれない。ただ私も外の眺めを見たい気持ちだったので断る理由がなかった。通路側に座っても誰とも話せないということもある。
いつの間にか寝ていたからわからないが、アードウルフさんがお二人の話に入れそうな時はリウキウに着くまで全くないようだった。
こうして僕とアードウルフさんの二人旅…と言っていいのかわからないけど…が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます