リュー9歳:計画進行中編
計画評価と再計画
マグナは正式に俺の相談役となり、大学に通い始めた。
エリストラーダの研究職クラスの頭脳が集う大学でも、類を見ない才能を発揮し、カトゥーゼ家にはたびたび問い合わせがきているほどだ。
先に契約を結び付けておいて本当に良かった。
大学はほとんどが自由登校らしい。月に一、二度出席を要する事があるらしいが、それも強制ではなく単位の一つで、主に持ち帰りの課題で進めていくのだという。
この国には大学生なんて専業でできる人はおらず、皆働いている事が前提なので、そんなものなのかもしれない。
大学には王城と並ぶくらい立派な図書館があるらしく、マグナはわりとこまめに大学に通っている。
泊まり込む施設もあるらしく、宿泊許可も与えてはいるが、本職は俺の侍従であるからと辞退された。そういうところは律儀なやつだ。
初動計画から何となくダラダラときてたけど、思えば乙女ゲームの舞台である王立学園入学まではあと6年もない。そろそろ期間も折り返しじゃないか。
というわけで、きちんと初動計画の評価と再計画をしようと思う。
まずは、情報収集。
学習面においては、貴族の初等教育は問題ないという評価だ。マナー等もハルに鍛えられたし、社交はユーリを見習ってそこそこスムーズにできていると思う。
領地経営は、必要な情報を身につけて、父に教わっている実務段階である。
一般教養は、多才と言われる程度にはあるし、知識の泉であるマグナがついているので不足があっても補える。地理や歴史はある程度は覚えたし、国外の事や外交についてなど、一通りは頭に入った。
アトラントは他国との接点がない内陸だから、直接外国とやり取りをすることは多分ないだろう。隣国王都に繋がる街道が出来上がったら、行商人とは関わる可能性があるけどな。
一方、国内情勢や中央の貴族勢力にはあまり関われていない。
情報は、ソルア経由で把握することができた。商会嫡男は国内情勢や貴族関係には情報通だ。
最近ソルアはカトゥーゼ家では全く行儀見習いと思われていない。俺の侍従とも思われてはない気がする。
でもまあ、宝石鉱山や街道開発のことだったり、利益が絡むとかなり役に立って実績を重ねているからか、もはやソルアが何の名目でここにいるのかは気にされていないようだ。
ソズゴン家のお茶会に出席して以降、俺は中央では大道芸人的な噂をされているようだ。
確かに魔法公演しちゃったしな。
アリステリアとは言われたままに文通し、それもずっと続いていて、時にはお茶会に招かれている。
おてんばな我が儘少女だったアリステリアは、関わってみれば意外と素直である。
ダメな事をダメだと言えば、きちんと反省できるいい子だ。
今は俺を兄と慕ってくれていて、使用人たちの言うこともよく聞くようになったらしい。
有力侯爵家の息女であるアリステリアのお気に入りの俺には、中央貴族も面と向かって嫌味を言えないようだった。
影では変わらずに言われてるんだろうけどな。
現在は、ソズゴン侯爵家とマルドゥール侯爵家、中央の二つの有力貴族のお茶会に参加して、少しずつ情報を集めている段階だ。
情報収集は、何事にも必要な基礎だから、今後も続けていく必要があるだろう。やりたいことが増えれば、必要な情報も増える。
もともとノープランで突っ走れる勇気と無謀は持っていないビビり属性ではあるが、優秀な味方も多くいるんだし、傲らず地道に続けていきたいと思う。
次に、体力作りと鍛練について。
体力は、HP的な意味ならその辺の大人を軽く超えた。アトラントの本職の騎士たちにはまだ及ばない。中央の騎士団はもっと優秀なのかもしれないが、さすがに接する機会がなくてどのくらいかがわからなかった。
乙女ゲームの攻略対象に、将来の王国騎士団ホープがいることを考えると、もうひと息鍛えておきたいかもしれない。
もちろん完璧に上回る必要はないんだけど、その脳筋キャラにいいように使われてたゲームのウリューエルトの姿を思い出すとなんとなく脅威に感じる。
攻略対象のハイスペック、想像がつかない脅威だ。
ちなみにレベル的なものはかなり上がった。俺のステータス表示と、リドルの某国民的RPGのステータス表示が混ざりあって、俺の分析魔法はまだバグが生じたままだ。
詳細を詰めるとわかるけど、いちいちステータスを追及して見てもない。
実際の数値って日内変動したりするんだよな。机の角に足をぶつけてHP減ってたら
レベルが上がってもアリー先生にはやっぱり全く勝てる気がしない。
成長に合わせてと、またプレゼントされた練習用の剣は、なんだか少し青緑っぽく光ってて、刃がないのに風を切る。
ものすごく重いのは、きっとサイズアップしたからだよな?
リドルが見てはしゃいでたこれを分析する勇気はない。大人しく使うまでだ。
ダンジョン探索は、まだかなっていない。
時々リドルが呼び出した魔物と戦闘訓練、魔法剣の訓練はしてるけど、クロノも付き添うし前みたいな無茶振りはない。
それでも毎回緊張するし冷や汗ダラダラだけどな。本当に戦闘に向いてないんだよ俺。
最後に、魔法。
できたら使ってみたいくらいだったけど、これはかなり成果をあげていると思う。
相変わらず、攻撃的な魔法は使えない。ただ、コントロールはかなり上手になったと思う。
魔法の訓練は息抜き程度に続けていたんだけど、気付けば前にマグナが湖で見せてくれた魔法を再現できるようになっていた。
まあ、再現したらMP尽きて倒れたけどな。
経験的なものもあるけど、大がかりなものよりも細かい調整の方が得意なようだ。
青い猫型ロボットの世界のようでロマンがある。
……でも、泥棒し放題だと思うと恐ろしい能力なので、極力黙っていたいと思う。
かなり便利だが、どこから出てきたかわからないものを食べてたり、どこから取り出したかわからないものを使ってたりすると怪しさこの上ないので、やっぱり友人たち以外の人前では使うことができない。
属性魔法は、やっぱりおおむねが大道芸かな。
喉が渇いてコップに水を出すとか、おにぎりの表面をこんがりと焼くくらいのことはできるけど、それ以外に実用的な使い道があまりない。
熱風を操ってドライヤーしてみたり、洗濯物を乾かしたりもできるけど、だいたい俺は侍従やメイドに世話を焼かれる立場であって、誰かの世話を焼く立場じゃないからあまり使わない。俺の髪はそんなに長くないしな。
中性寄りだった顔立ちが大きめな男児に成長した結果、中央のきらびやかなお茶会では壁の装飾と見分けがつかない薄味に育った。
長髪が似合う顔じゃない。
母に似た顔のパーツは悪くないはずなのに残念な息子で申し訳ない。
まあ、顔の話は置いとこう。俺に今も昔もイケメン属性はない。
クロノやハルやマグナがイケメン過ぎてやさぐれたいくらいだ。
こうして考えると、初動計画のほとんどが実現されている。成果はしっかりと上がってたんだな。
それじゃ、現在の状況をふまえて中期の計画を立てよう。
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・情報収集 適宜
不足は国内情勢と貴族勢力等
・領地開発
[現行]街道整備、宝石鉱山開発、魔法薬と薬草の生産、米の栽培実験中
[課題]行商関係の拡大、余った土地の活用方法、領内の服関係の調査と改善、領内の問題の把握と改善(未着手)
・領主業の習得
・鍛練と魔法練習の継続
・人脈の形成と、人材確保
優秀な味方を増やす
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初動計画よりもずっしりときた。
考えれば考えるほど、やるべきことは多い。
書き連ねると、やらなきゃいけない気分になるもんな。
だから、最後には大きな文字で付け加えよう。今しかできない、大切なことだ。
『友達と思いきり楽しく遊ぶ!!』
こうして俺の中期計画はスタートしたのだった。
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