戦闘訓練
―――まもののむれがあらわれた!
いや、一体だけどな。でもこのガチな無茶振りはなくないか?俺の装備はぬののふくと練習用の剣だけだぞ?
後で正座で説教だからな、生き残れたら!!
と、苦情を言っても目の前の悪魔っぽいものは消えないからどうにかするしかない。
ぶっちゃけ、 まじでビビるけど、そんなこと言ってられないからな。
俺が望んだ結果だって、自覚だけはあるんだ。
悪魔の羽の動きは、60倍速の世界でもゆっくりと確認できる。
まだ、こちらには気づいていない。気づかれるまでの数秒は、準備する時間がありそうだ。
まずは、相手を知ること。知れば対処することができる部分はあるはずだ。
途方に暮れるくらいなら、まず分析!
―――――――――――――
【悪魔っぽい魔物 】
テディア山の主のしもべ
せいべつ:なし
レベル: 45
HP:2583
MP:886
主属性:かえん
属性:こおり
耐性:ぶつり かえん やみ
弱点:ひかり しんせい
―――――――――――
ちから:80
すばやさ:1086
たいりょく:600
かしこさ:237
うんのよさ:106
こうげき力:1209
しゅび力:1855
―――――――――――
まほう
かえんこうげき
ひょうけつこうげき
しっぽでなぐる
じょうたいいじょう:こんらん
しんたいきょうか
たんきょりてんい
―――――――――――
隠せない焦りに、色々なフォーマット混じっちゃったけど、知りたい情報があれば問題ないだろ。
………いやちょっと、だいぶ、勝てる気全然しないけどな!!
速・魔型でこの感じだと遠距離攻撃派かな多分。近づいて攻撃するメリットなさそうだし。
元が早い上に短距離転移するなら、うかうかしてられない。
状態異常なんてどうしていいかわからないが、範囲魔法だったとしても動き回っていれば何とか回避できるかな。
とりあえず、相手に炎耐性あるなら魔法剣の炎だめじゃんな。何が大丈夫なんだよリドルのやつ。あいつオヤツも抜きだな。
俺は剣にまとった炎を消した。
その瞬間、魔物はつられるように此方を見る。初めて目があった。
石で出来た彫刻のように瞳孔がない輪郭だけの目なのに、それは俺を見つけると赤くギラリと光った。めっちゃ怖いっす。
神聖魔法は使えないから、光魔法。恐怖感が乗っかって、さっきよりも丹念に圧縮した魔力を剣へとまとわせた。
とにかく、あれをなんとかできる光魔法。悪魔を浄化するような、エクソシストも真っ青なやつ。
―――――光!
織り上げた魔力に念じると、視界を覆うような白い光が現れた。
思わず目を閉じて、耳に届いた物音と振動に急いで目を開けると、光を纏った刀身は白く、周囲には金色ががった優しい色の光の粒子が舞っている。
視線を魔物に向ける。
………魔物は、膝をついてうずくまっていた。
俺は、驚いて何が起こったのかよくわからず、まじまじと魔物を見つめた。
体力ゲージは8割方削れている。予期せずに不意をついた弱点攻撃がヒットしたようだ。
脱力して項垂れた顔が、わずかにこちらを向こうと持ち上がろうとした。
マズい、素早くて遠隔攻撃が得意なやつになんて、攻撃の隙を与えたら被害は膨大じゃないか。畳み掛けるなら今しかない。
俺は、走った。身体は風のように軽く、駆け抜けた後には突風がおきている。踏みしめた足元の土はめくれ、緑の葉が舞い上がる。
だけど、今はそんなことを気にしている場合じゃない。やらなきゃ、やられちゃうだろ?
飛び上がって俺の身体の倍はある魔物の項垂れた首元に剣を振り下ろす。
いつもはアリー先生にやすやすと受け止められて、カウンターまでくらう上段の構え。
渾身で振るった剣の先で、魔物は光の粒子に吸い込まれるように霧散して消え失せた。
青白い魔力の結晶がくだけて、いつか見た青い光の雨を降らす。
息は絶え絶えだし、汗も動悸も止まらない。目には涙が浮いているし、身体はわずかに震えている。
使い果たした魔力に今気づいたかのように、身体が脱力して俺はその場に座り込んだ。
祈るように握りしめていた手からも力が抜けて、柔らかな草の絨毯に音もなく剣が転がり落ちる。
ああ、ほんっと、俺って戦いに向かないな。
ぼんやりと意識を薄れさせた瞬間、俺は暖かな何かに抱き留められていた。
「……一樹にこんな無理をさせて、消えたいの?」
いつもは柔らかで温かい声音が、耳元で冷たく言葉を紡ぐ。
脱力したはずの身体には力がみなぎり、まどろむように霞んだ頭もはっきりとすみわたる。
動悸も震えも嘘のように消えて、胸の内にあるのは温かい安堵。
「お前は、歩く回復の泉かよ」
思わず笑いがこぼれて、俺を抱く身体を抱きしめ返す。
悪い、心配したんだよな。俺は大丈夫だから。
自分の手で、叶えたかったんだ。強くなって、大事なものを守れるようにって。
それでな、今ちょっとだけ叶えたところ。
でも、カッコよくできないのは、やっぱ俺だから仕方ないよな。
温かでくすぐったい気持ちで、笑いながら抱いたクロノの背中をトントンと叩くと、心配性の神様は眉をハの字にして涙目で笑い返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます