新年会とホームパーティー 2
隠れ家の建設が終わった俺は、課題を持ち帰りで家庭教師と従者に相談した結果、ソルアの実家の商会経由で内装品、家具と魔法道具を発注することになった。
貴族の買い物とか悠長なイメージだったが、なんと即納である。
特注じゃないから納期を最優できたとのこと。
この世界には僻地も多く、水関係や、トイレなどの浄化、ライトや簡易キッチンに至るまでの魔法道具に一定の需要があるらしい。
魔法道具便利だな。それなりの宝石は渡したけど。
土魔法でサクサク掘ったし採掘の魔法も手に入れた。自分が何を目指しているのかわからない。確実に、使える魔法が領主向けじゃないよな。
ともあれ新年会の場所として、秘密基地をサプライズ感満載に準備できた。
娯楽は…カードゲームやボードゲームならこの世界にもあるものの、テレビやコンピューター系のゲームは当然無理だ。
代わりに普段見ないような本でも揃えてみるかな。
地方の物語や伝記など、実用性重視ではない娯楽寄りのもの。薬草学や医学なんかも興味があったし、そういう雑学っぽいものも置いとこう。
残るは、料理である。これはさ、皆にジャンクフード寄りのものを用意したいと思ってる。前世の懐かしのスナックフード。
俺は、料理はできるほうだったと思う。
うちの母親は、俺たちが幼い頃にはニコを心配して家にいたが、ある程度育ってからは共働きだった。
ニコと二人でキッチンに立つこともあれば、ニコの調子が悪い時なんかはよく飯を作ってやってた。
中学生くらいの時には、お菓子作りにハマったニコと一緒に毎日のように焼菓子やケーキなんかも作った。
料理や製菓が趣味だった訳じゃないから、一般的なものしか作れないし、凝ったことはできないけど。
この世界ではまだ食べたことがないものを作ったら、皆喜んでくれるかなと思うんだ。
とはいえ、米はないからな。この世界には米がないらしいんだよ。
クロノに聞いたけど、クロノは元の世界でアジアから遠い場所にいたから、米を知らなかったらしい。非常に残念である。
となると、必然的にパン食。
食材においては、加工品以外はこの世界にもほとんどある。
その中でホームパーティーっぽい摘まめるやつと言えばなー。あと、あんまりにもな大口開けなくても食べれるやつ。貴族子女にその発想はないからな。
簡単なクラッカーのオープンサンド、サンドイッチ、そしてミニピザとかどうだろう。
ジャンクフードにフライドポテトとフライドチキンは欠かせない。これは食べやすいようにピック添えかな。
デザートはチョコレートのシフォンケーキとレアチーズケーキ。レシピなしでも難なく作れるやつだ。
個人的にはポテトチップスが食べたいが、手で食べるって文化がないから、皆は食べにくいだろう。
食材を調達し、数回練習してみると、カンはすぐに取り戻せて上手に作ることができた。オーブン型の魔法道具まであるこの世界にいいね!したい。
ついでに、ここの所つわりで痩せた母にチーズ控えめ、トマトたっぷりのミニピザを差し入れたら、お気に召してくれたらしい。
日本のジャンクフードバンザイ。あ、本場のピッツァとは違うジャパニーズジャンクフードだよな?アレ。
新年会の始まりに、集まった俺の部屋から新築の隠れ家に
外から見たら石壁の地味な建物。
蝶番が石壁と木材に融合した摩訶不思議な扉を開いて中に入ると、靴を脱いで上がる日本式の玄関の先には、そんなに広くはない部屋。
落ち着いたブルーグリーンのフワフワの絨毯に、こじゃれたソファーセット。
少し離れた場所には、小さなローテーブルだけがあり、周囲にはその上に座れるようにと大小のクッションの山が築かれている。
部屋の端には本棚とキャビネット。
普通の大きさだけど、ちゃんと開ける窓だってある。
石造りは冷えるから、部屋なりの小さい暖炉も造った。
部屋の奥にはドアが二つ、その奥は簡素なベッドが二組ずつ並ぶ寝室だ。
主室を囲むように、狭いながらもトイレ、キッチン、シャワールームも完備している。
貴族の邸宅に比べればなにもかもが質素で狭っ苦しいが、友達が集まる隠れ家としては、十分すぎるんじゃないだろうか。
隠れ家の探険にはしゃいで、ユーリとソルアはまだ見たことがなかった外の景観を楽しんで、見知らぬ料理に言葉を弾ませて、新年会は賑わいをみせた。
クロノは食べ物に夢中で感動しきりだった。前世で俺たちを見守っている時に食べてみたかったらしい。
途中で民俗学の本にかじりついて離れなくなったマグナは諦め、カードゲームに賭博を持ち出そうとしたソルアは叩いといた。
いたいけな子供に余計なことを言う年上の典型例か。ちなみに今日もユーリについてきた侍女さんは、今回は楽しそうだ。良かった。
ある程度の年になったらこの隠れ家に泊まってキャンプしたいな、なんて事も話しながら、俺たちは普通の子供たち、普通の友達としてホームパーティーを楽しんだ。
子供時代の楽しかった思い出は、俺にも増えた。
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