リュー6歳:友達でライバルで仲間たち編
一年の成果
記憶を思い出してから、1年くらいが過ぎた。
季節は冬。といっても、暖かいアトラントでは、冬景色というよりも、早くも春を感じる気候だ。体感では春と秋が長い、過ごしやすい地域である。
計画は上々だ。
毎日の鍛練の結果、俺の肌は父とそっくりな小麦色一歩前だけど、体力がついた手足は周りの同年代よりもしっかりとしている。
何より、同年代と集まると、必ずといっていいほど一、二を争う長身となった。長身である、夢にまで見た。もちろん、数個年上にはかなわないけどな。
地道な勉強の成果か、貴族的な初等教育は及第点を貰えた。
マナー関連は苦手だが、子供相当としては合格。
興味の幅が広いので、今度新しい家庭教師がくることになった。平民であるものの、かなり優秀な人物らしい。
領地については、何度も仮想視察を繰り返して、地図内をだいたい見て回れたと思う。
カトレナの街はこの領内で最大規模で、後は予想通り農村が多かった。
地図通りまでではなかったが、空き地も多い。土地が有り余ってるから、地形的に扱いにくそうだったり、周囲に何もなかったりすると、誰も開拓しようとは思わないんだろう。
社交界というのはおこがましいレベルだが、近隣領の貴族たちのお茶会には慣れてきて、顔見知りも増えてきた。
真面目に書き貯めたメモはそろそろ製本できる量になってきて、会ったことがない中枢貴族の噂話も度々聞くようになった。
そうそう、待望の魔法を習い初めて半年弱だけど、俺は魔法が使えるようになった。
最初に覚えたのはなんと、仮想視察でクロノの力を借りて使い放題していた
この世界の魔法はイメージの具現化らしく、詠唱は皆でイメージを共有するような古代魔法や集団魔法のためのものらしい。
呪文を使う人もいるけど、その人がやりやすい方法っていうだけで、無詠唱は全く珍しい話ではない。
クロノの力を借りながら、いつの間にか自分の魔力も使って魔法を発動させていたから、視察の後はあんなに疲れ果てていたんだな。
そしてちゃっかりと習得してしまった。
魔力の限界はまだ少なくて、見知らぬ地で力尽きて帰れなくなったら洒落にならないので、生身で一人では使えないけど。
他の魔法もすぐに使えるようになった。
でも、俺は平和な日本で慎重に定評があった日本人。他人を攻撃する魔法なんか恐ろしくて考えられないし、火事になりそうな炎とか、災害でしかない雷とか、恐ろしくて使えるわけがない。消火栓や避雷針を探す方が得意だ。
調理用のガスバーナー程度の炎と、スタンガン程度の雷魔法なら使える。水魔法で水球を作ったり、緑魔法で植物を育てるのは上手にできた。
最初に見た魔法、クロノが使っていた光を蝶や鳥に変化させる魔法も使えるようになった。せいぜい二、三体が限界なんだけど。
最後に土魔法、これはヤバい。某有名なウォルトさん的なイメージだけで、目の前にシンデレラ城でも氷の城(土でできてるけど)でも造れてしまう、ありのままに著作権侵害してしまう魔法だ。
規模がでかすぎて魔力枯渇は免れない。
しかも土でできたシンデレラ城なんか崩落がこわくて探検すらできない。
俺の中で土魔法が砂場遊びか粘土細工みたいなイメージなんだと思うけど、ちょっと封印しようと思う。
こうして一年の成果を確認すると、本当に上々と言えるだろう。
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