第92話 冬の吐息

 前を歩く人の口からぽかりぽかりと白い息が立ち昇る。煙草かとぼんやり見ていたら、それは冬の冷気に凝ってかつりと地べたに落ちて砕けた。白くきらきらとした欠片は凍えた小鳥たちの腹に収まり、ふっくらと温まった彼らは空へと飛び立ち星のように煌めいた。

 歩み去る背中が心配だが、如何にもならぬ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る