第91話 distance

 雪が降ると、空間に奥行きが生じる。君と僕の間の、手を伸ばせば届くかに感じた距離に不規則に降り落ちて舞い上がる白いノイズ。見つめれば、世界がくらりと歪む。初めから均衡などなかったかのように。伸ばした指は冷たい不確かな白を掴んで、君は溶けて消えた。目の前には惑うように飛び交う雪だけ。

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