真面目なお仕事ですね2
男性はピクリとも動かなかった。
『死ぬほどの蹴りじゃないと思うんだけどなぁ』
念のために右手と左足を背中側からプラスチック手錠で固定する。
『貴女が安西典子さん?』
「いやぁぁぁ、来ないで! お願い……もう止めて」
あっ、モナコ語で喋ってたわ。
「貴女が安西典子さん?」
「えっ、……あ、はい」
「助けにきたわ。僕は日本警察特殊任務課エージェント狩野仁美よ。ちょっと待ってね」
彼女をベッドに固定していた拘束具を外して持ってきた服を渡す。
「ごめんね、サイズわかってなかったし、下着も無いけど」
「いえ、全然大丈夫です。ありがとうございます」
「着ながらで良いから現状を報告してくれる」
「あっ、はい。拘束されたのは多分2週間程前、私がエージェントとバレた訳ではなく、ただ女を必要とされただけです。
…………拘束から昨日まで……その……あちこち開発……昨日から……この状態でした」
「訓練は受けてたのよね?」
「……はい」
僕は彼女を引き寄せて軽く抱き締めた。
「頑張ったよね、怖かったよね。もう大丈夫だよ」
僕は彼女の抱き締めたまま、スマホを取り出して洋子さんに堂々と電話で連絡を入れる。
「安西典子確保しました。現状パターンF。5分後に其方に向かいます。おもいっきりやっちゃってください」
僕の腕の中で震える彼女の背中を軽く叩きながら通話を切った。思っていたより彼女の震えが止まるのが遅れた。多少彼女については辛いと思うがこれも任務だし……。
「乗り込むよ! 戦闘経験ある?」
「……訓練だけです」
「ん~、じゃあ見とく? 僕と洋子さんで簡単に終わると思うし、下手したら終わってるかもしれないし」
2人で1階まで降りてきてお手洗いの前を通り、来客室に戻ってきた。
最初の男2人は既に洋子さんによって熨されており領事長がそれに対して批判しているようだった。
『遅れてすみません。そこでちょっと知り合いにあったもので話し込んでました』
僕はモナコ語で話しながら彼女と一緒に領事長の前に立つ。
『おかしいですよね、確か彼女は新婚旅行で何処に行ったかわからなかったんですよね?
モナコではベッドに拘束されて無理矢理犯されるのを新婚旅行って言うんですかね。
因みにですけど、そこで熨されてる男達の会話も記憶させて貰ってますので言い逃れは出来ないですね! そこのクッキーと紅茶の成分分析させて貰いますね』
顔をしかめる領事長だが何処か余裕を感じられた。多分外交特権を主張するつもりだろう。
そこに僕がよく知る2人の女性とつい最近知り合った女が入ってきた。
「ここの領事館ってどうなってんの? 廊下にこんな人がいたんだけど……」
飛燕と李凛がマドリーヌを引き摺って入ってきた。プラスチック手錠は外されて、ローターも使われていない。しかし、服装は下着姿のままだった。
「李凛、宜しくね。飛燕は撮影係ね」
「えぇ~、ま、良いけどぉ」
人間、咄嗟の時にはやっぱり母国語が出るんですね。
『君達は誰なんだね』
「……何語……かな? わかんない……。領事……長さ……ん、あたしに……見覚え……ない?」
『君なんか見覚───』
「ん、本能の……まま……やっちゃえ」
李凛の魅了が領事長を襲う。その言葉を皮切りに、1番近くにいた僕の服を掴むとソファーに押し倒して、むしるように引き裂いた。そして、敢えて好きなようにさせてから僕は暴れだし、マドリーヌの方に突き飛ばした。
僕に逃げられ、目の前には下着姿の女性がいれば標的は自ずと其方に変わる。
媚薬で性欲の高まった女性と本能のまま腰を振り続ける男性との映像はリアルタイムでネットに流れている。
「外交特権? 何それ? 美味しいの?」
僕は破かれた服をそのままにソファーに座ってその行為を眺めていた。
「仁美……お姉……様、あ、あた……し、我慢……出来ません」
この後、僕が必死で李凛から逃げていたのは別の話し────。
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