業務命令

「何ですか? こんな所に呼び出すなんて珍しいじゃないですか」


 深夜11時、僕は洋子さんに呼び出されて、とある公園にやって来た。洋子さんはいつもの白いブラウスにグレーのタイトスカート姿だったが……。


「……! どうしたんですか!」

「やっぱり気付くわよね。たまにあるのよね……」


 薄暗い街頭に照された洋子さんはいつものようにモデル立ちをしていたが、スカートの一部が異様に膨れ上がっていた。


「鎮めて欲しいの。……駄目かな?」

「洋子さん」

「……」

「内藤主任」

「何かしら?」


 はぁ、どうやら業務命令みたいだ。


「職権濫用、パワハラですよ。……わかりました、此処でですか?」

「違うわ、着いてきて」


 そう言って洋子さんは僕の横をすり抜けていく。そして僕はその後を追った。

 公園から出ると4車線の道路を横切りホテルに入る。既に部屋を取ってあったのか、フロントでは声を掛けるだけでカードキーを受け取っていた。

 エレベーターに乗ると洋子さんは僕に唇を重ねて抱きついていた。

 僕と洋子さんの身長はピッタリ一緒だ。バストもウエストもヒップも全て同サイズ。洋子さんも僕と同じ『バイオテクノロジーヒューマン』なのだから。

 唯一違うのは、服の上からでも解る、熱く滾っているが付いているかいないかだ。


 エレベーターは12階に到着してドアが開いた。ドアが開いたのに洋子さんはキスを止めてくれなかった。

 僕は無理矢理洋子さんを突き放した。


「着きましたよ」


 残念そうな寂しそうな顔でエレベーターを降りていく洋子さんの腕にしがみついて顔を覗く。

 我ながら余りにも白々しいあざとさだと思う。

 当然、そのあざとさには自らの願望も混じっている。

 

(夕方シャワー浴びてから汗かいてないよね。まさかお誘いだとは思ってなかったから後ろは処理してないよぉ)


 部屋に入った途端に洋子さんは服を乱暴に脱いで僕をベッドに押し倒した。

 洋子さんの舌が僕の口内を蹂躙する。着ていたTシャツとブラは胸元まで捲られ、履いていたスポーツスパッツとショーツは膝まで脱がされていた。誰がどう見てもレイプの現場だった。



「ごめんなさいね、少し楽になったわ」


 まるで淑女の様に隣で微笑む洋子さん。


 ───抜かず3発で少しなの!? 僕の身体はまだ絶頂から降りて来ていない。


 もう時刻はてっぺんをまわっていた。これ朝までコースじゃない?




 目が覚めると目の前に洋子さんの顔があった。僕はの上に乗った状態で寝ていたようだ。

 ふと下腹部に違和感を感じて視線を落とすと、まだ繋がったままだった。


「ん、……ぁん」


 ゆっくりと腰を浮かして下腹部の違和感を取り去る。それと同時に白い液体が僕の彼処から彼のお腹の上に流れ落ちた。


「ティッシュ、ティッシュ」


 ピアス台の上にあるティッシュに伸ばしかけた手を引っ込めた。僕はゆっくりと彼のお腹に顔を近付け舌でそれを舐め取っていく。すると目の前で彼のモノが起き上がってきた。


「ん~、朝勃かな? もう昼前だから昼勃?」


 僕はそんなバカな事を言いながら無意識の内にに付いた汚れを舐め取っていた。


「ん、綺麗になったかな」

「また汚れちゃうけどね」


 ここで僕以外の声が聞こえるのは洋子さんしかいない。ゆっくりと視線を洋子さんの顔に向けるとニマニマと笑っている顔が見えた。


「いや、せっかく綺麗にしたんだから汚すのは……」

「それもそうね」


 その言葉にホッと一息付く。まだ身体に気怠さが残っているのに追加プレイをされるのは、身体的にも精神的にも辛い。

 しかしその思いは絶ち切られた。いきなり足首を掴まれて引っ張られ、その結果、自然と僕は洋子さんの顔の上に跨がっていた。


「お礼に私にも綺麗にさせてね」


 あぁ、無理だわ。これは間違いなく僕から……。


 ……僕から求めてしまう────。

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