何で此処にいる

「大根おろしとポン酢」

「マヨとケチャのオーロラでしょ!」

「……甘酢」

「……」

「……」

「……」

「何故でアンタが此処にいるの?」


 今、キッチンに洋子さん、リビングには僕と飛燕、そして赤髪の李凛が座っている。


「それは置いといて、甘酢はハンバーグじゃなくて肉団子よ」

「いや、置かないで! 戻してきて! 何で李凛が殺されずに僕達の家にいるのよ? ちょっと、洋子さん聞いてる?

 って言うか、何でキッチンで1人だけデミグラスソースでハンバーグ食べてンの?」

「何か仲良さそうにハンバーグソース談義してから……。因みに私はデミグラスソース派よ。でも、目玉焼きは醤油が1番ね」


 話しを拡げないで! 


「何でよ~、ソースでしょ!」

「……マヨと醤油」


 ちくしょう! 僕もマヨと醤油だよ。何で赤髪と一緒なんだよ!


「ってか、何でアンタは飛燕に抱きついてンのよ!」

「こんな子なのよ。人見知りが激しくてね……、あれっ? もしかして妬いてくれてるの? 仁美が1番だから心配しないで良いよ」


 突然立ち上がって、僕の胸座を掴んで引っ張りあげた。ってか、何なのよ? コイツ人見知りじゃなかったの?


「お前、誰だ? 人間風情が飛燕様に───」


 イラッとした。一瞬で身体中の血液が沸騰した様な気がした。人間風情? 飛燕様? 

 次の瞬間、僕は胸座を掴かまれていた手を掴み返し、靱帯損傷、骨折を気にすること無く力の限り捻りあげ、赤髪を鷲掴みして、壁にドアに顔面を何度も打ち付ける。


「で、人間風情が何だって? その人間風情にボロボロにされるお前は何だ? 早く答えろよ!

 相手の力も見極められなくて、上から目線で喋るな! どうせお前は不死か何かで洋子さんが殺しても死ななかったんだろうけど……。

 マグマのど真ん中に落とされたら? 今の時代、宇宙に人ひとり連れていくのも可能だぞ? 大気圏外で無酸素、無重力。なまじに不死の方が辛いこともあるぞ?

 それに余り力無いよな? コンクリートに顔だけ出して固めて、重りを付けて海底に沈めるか?」


 今こうして喋っている間にもコイツの身体は回復、修復されていた。僕といい、洋子さん、コイツに飛燕も……。この回復能力は本当に人類に必要な物なのだろうか?


 


「……仁美様~♡」

「ちょ、止めて! 離れて! 暑苦しいから。飛燕も笑ってないで助けてよ」

「思い出したわ。そう言えば、あの時も私が李凛をボコボコにしたんだったわ。

 って、何で私、李凛に人見知りされてる訳? 仮にもついさっきまで私を慕ってたんじゃないの?」


 やっとの事で引き離した李凛は自分が打ち付けられた壁やその時着いた血を愛おしそうに指で撫でていた、


「……見てるだけで……逝っちゃう……」

「洋子さん、早急に修理会社に連絡して! 40秒で直させて!」

「いいじゃない~、貴女が相手しなくても勝手にそれを見て逝ってくれるのよ」

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