人外魔境
「逃げる?」
「勿論!」
今、僕達は大勢の人達から逃げ出そうしていた。どうしてこうなったんだろう?
いくら治外法権を持っているとはいえ、一般人を殺したくはない。
「この分だと、ここの警備員も怪しいよね? 第1目標は此処からの脱出」
「全く~、多分洋子さんが絡んでるよ、これ」
「ですよね~」
人々がまるで映画のゾンビの様に襲ってくる。実際にゾンビになってるわけではないが、休日のショッピングモールの客の殆どが襲ってくる。
それも素手ではなく、鉄パイプや金属バットを振り回している人達もいた。
───カシャッン。
「飛燕、緊急事態発生! 前方に銃所持者がいる。アクション起こす音が聞こえた! これ、洋子さんじゃない、ガチよ!」
僕は肩から掛けていたキャンパストートバッグの中からベレッタと予備マガジン2個を取り出す。
飛燕も自分の鞄からガバメント1911A1とマガジン1個を取り出すと鞄を捨てた。
「ねぇ、襲って来てるのみんな男だよね。捕まったら輪姦決定?」
「多分ね。でも、こんだけ動きが怠慢なら捕まるわけないし……。でも、もし捕まったら『超絶美人姉妹の輪姦! 快楽地獄牝堕ち』になるわよ」
「何か物凄い鬼畜映像のサイト月額1100円で見放題の作品名は止めて! 想像したら……濡れてくるから」
「誰もそこまで詳しく言ってないし……。
真面目な話し、この首謀者に心当たりがあるわ。私の考えが当たっていれば……、中国が再度動き出した事になるわね。
私と同じ組織に居た……『李凛』が動いてると考えてる。『李凛』の能力は魅了。夢魔の能力」
夢魔ねぇ、って事はキャスバスかな? 男ばっかり襲って来てるんだから。
───飛燕が送られて来てから10年。
このタイミングで何故?
飛燕と同じ様な能力を持った組織が中国にあるのは飛燕から聞いていた。既に米国は『ニュータイプヒューマン』N.T.H.として日本の『M計画』と似たような実験、成功例者を発表していた。
米国N.T.H.は日本のM計画と違って既に成人している人間に対して一専門分野の能力を著しく上げる物だ。
日本は僕という成功例があるのに未だ発表はしていない。と言うか、発表出来ないのだろう。
───それは余りにも人道的に外れているからだろう。
試験管ベイビーならいざ知らず、成人迄特殊な溶液の中で育ててしまうのだから。更には精子を提供した人物の記憶を植え付けるという暴挙だ。
その上、ミトコンドリアの活性化に成功、肉体に衰えという概念が無くなっている。勿論、ミトコンドリアが活性化するにあたって、治癒能力も半端無い物になっている。
───今のところ、僕が成功例だといった事は何処も気付いていない筈だ。
「二手に分かれようか? 多分飛燕に追手が集中すると思うけど。襲って来てるのは男ばっかり、名前からして李凛って女でしょ?
僕が後ろから仕留めるよ。ただし、ここの中央棟には行かないで。彼処は吹抜けがあるから、狙撃されるとヤバい」
「あ~、裏切者を消しに来たってヤツね。可能性大だわ。
今はどうかわかんないけど、赤い髪の毛でデカ乳。アレの魅了は女にも少なからず効果があるから気を付けてね」
「ん、了解。説明乙!」
案の定、僕には追手は来なかった。
さぁ、考えろ! 僕なら何処から飛燕を狙う。どうやって確実に飛燕を仕留める?
ここ、ショピングモールはフェイク、出来ればラッキー程度。脱出後の逃走……、車に爆弾を仕掛ける? 逃げ切って自宅に戻った時? いや無理だ。あのマンションを狙える狙撃位置が存在しない。あのセキュリティを掻い潜って爆弾の設置もあり得ない。
───ブーン、ブーン、ブーン。
スマホに着信? 洋子さんか……。
「何? 今取り込み中だけど」
『マンションの屋上から侵入者よ。どうする?』
「それって赤い髪の毛のデカ乳?」
『ビンゴ!』
「うわ~、そっちに行ったか……。そいつ李凛って言って、中国の異能力者だね。面倒が起きる前にぶっ殺して!」
『わかったわ、跡形もなく燃やしとく!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます