回想
「これ、結構重たかったけど……あれ?」
「そう、9mmパラベラムと92マガジン10個」
「何それ! 面倒な任務入ったの?」
普通、マガジンを10個も取り寄せるなんてあり得ない。
ベレッタ92の弾倉数は15発、計150発のストックを持つなんて、どこの狂人よ! って感じ。
「私は.45ACPだから共用って訳にはいけないね」
「飛燕はガバメントだもんね。せめてパラ・オードナンスにしたらパラベラム使えるのに……」
「ん~、やっぱ遣い慣れたもんに限るっしょ。私はどちらかと言えば狙い撃ちタイプだし、守……じゃなくて仁美みたいに数打ちゃ当たるタイプじゃないし。
それにこっちは御守りみたいなもんだし、私はいろんな意味で身体を使うタイプだしね」
確かに、飛燕は相手の懐に入り込み、ベッドの上で任務をこなす事が多い。それが事前なのか事後なのかは知らないが……。
僕の時は事前だったけどな。
「お兄さ~ん、私と遊びましょっ! 今なら2本で良いよ」
僕の記憶で今から6年前、実際でいうと10年以上前になるのか? 繁華街の裏路地で僕は初めて飛燕に会った。
正直言うと、この地点で彼女が僕を消そうとしている事に気付いていた。そして、僕も彼女を消さなければならなかった。
「おっ、いいね! 決まった場所はあるの? 無いならホテルに行くけど」
「あるよ、こっちこっち。泊まりで小6本、お釣は出ないよ」
僕はポケットから財布を取り出して10枚の1万円札を掴んだ。
「これで2日間一緒でどう?」
「へっ!?」
「だから、10万円で2日間、君は僕の物にならないか? と聞いているんだけど?」
この時既に、僕は飛燕に恋をしてたんだと思う。初めて任務でターゲットを殺したくないと思った。
仲間に引き込んで情報を上に上げれば殺せとは言わないだろう。
そう思っていた。そして実際そうなった。
少々問題はあったが、僕は彼女を口説き落とした。仲間ではなく恋人として……。
そして彼女から僕が守っている『M計画』の全貌を聞くことになった。更に彼女の秘密も聞くことになるのだが、正直言うと未だに信じられていない。しかし、僕はその行為を実際に体験している。信じるしか他ないのだ。
だから、僕は組織が『M計画』を用いて、彼女の記憶を操作したことに余り不安を持っていなかった。
……のだが、心の何処かに不安があったのだろう。僕は最後の最後で任務に失敗して命を落としてしまった。
しかし、それが功を奏したのか。僕はこうして女性になってしまったが飛燕とほぼ同じ状態で今この場所に生きている。
「飛燕、取り敢えずデートに行かない? 服が無いんだよね」
「ん、いいよ。お姉さんが色々見繕ってあげよう。私好みに仕立ててあげるよ」
「戸籍上、お母さんなんだけどね。ねぇ、もう一度契約結ぼうよ。僕が死んだ時に解除されてるんでしょ、ダメ?」
彼女はこれでもか! っていう程の笑顔を向けてきた。
「んふふ、今日の夜に結ぼうと思ってたんだよね。仁美から言ってくれて嬉しいよ」
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