疑問
何だよ! 何なんだよ、そのバイオテクノロジーヒューマンって!
「僕は人間じゃ無いって事なのか?」
「間違いなく人間よ。今の日本の法律では両親がいない新生児扱いになるけど。……ただし、付属能力は世界で初めての成功例ね。
それと香織は後で私に付いてきてもらえるかな? 貴女の記憶を元に戻すわ」
訳わかんわよ! まだ、薬で女になったって方が理解できる。何なのよ、そのバイオテクノロジーヒューマンって?
「それって……、守と私の子供じゃないの?」
僕の憤怒とは裏腹に嬉々とした表情を香織は見せていた。
「ねぇ、洋子様……。先程私の記憶を元に戻すと言われましたけど、今までの記憶はどうなるのですか? 出来れば残したままにしたいです。今のこの気持ちを忘れたくありません」
洋子さんはスマホを取り出し、何処かに電話を掛けている。
「私よ。飛燕の記憶データをパターン1から3に変えてちょうだい。…………そう、本人の希望よ。
それと、飛燕の名字を狩野に変えるかしら? もう1つ、仁美の戸籍を姉ではなく、養女に変更出来るかしら? 年齢は飛燕が28歳、仁美は21歳で……えぇ、実年齢で…………、えぇ夫は守、死亡と言うことで空欄に……、ではお願いしますね」
洋子さんは香織に笑顔を向ける。
「これで3日後には貴女は日本国籍を持った未亡人になるわ。でも戸籍上は兎も角、貴女の記憶では実の娘をご主様とした奴隷になるのよ、構わないの?」
「構いません」
「そう、じゃあ香織に命令するわ。貴女は第1主人を私、佐原洋子から狩野仁美に変更する。今この時を持って貴女と私は主従関係を解除し、他人となる」
どうやら僕の意思は考慮されないみたい。香織も喜んでるみたいだから……いいか。
僕の置かれている立場はなるようにしかならないみたいだし……。
「洋子さん、1つだけ教えて欲しい事があるんだけどいいかな?」
「いいわよ、何かしら?」
「僕は人間として生きていけるのですか?」
───そして1ヶ月が経った。
結論から言うと僕には途轍もない能力があった。
狩野守のエージェントとしてのスキル、張 飛燕の中国拳法を軸とした体術、そして、……性欲が異常に高い事だった。
中学生の覚えたての自慰みたいな……。しかし、これは女性エージェントとして致命的だと宣告された。
AVでありがちな、女スパイの快楽拷問は実際に存在すると───。
それが解ってからの1週間は地獄の日々だった。
手足を拘束、数種類の媚薬を投与され、その上での放置プレイ……。ハッキリ言って発狂した。狂い死ぬかと思った。
───そして8日目。
いつもの真四角な天井には蛍光灯が1本あるだけ。部屋の片隅に水道の蛇口と丸められたホース、床は何の飾り気もない薄汚れたタイル張り。
僕はその中央のパイプベッド上に大の字に固定されている。
「やだ……、お願い止めて。それ、本当に辛いの、苦しいの、だから……」
3種類の錠剤を無理矢理飲まされ、2本の注射を腕に射たれ、局部に塗り薬の塗られる。効果はほぼ半日……。
僕は泣きながら固定された身体を捩り、僅かな抵抗を試みる。
───あれっ?
いつまで経ってもあの感覚が襲って来ない。
いつもなら僕が狂い始めてから部屋を出ていく洋子さんは、僕が身動きひとつしないことに足を止めていた。
彼女は白衣の胸ポケットから鍵を取り出して、僕を拘束していた手錠を外し始め、僕の身体を起こし、そして白衣を脱いで僕の両肩に掛けてくれた。
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