マジで?

 俗に言う警察手帳だと思う。それを見せられては罵る事は出来なかった。

 僕は洋子さんに会ったら問い詰めるつもりだった。無理かもしれないが暴力的になっても良いと思っていた。

 その想いに対してその手帳は反則行為だ。


「まずは、私の所属する組織について話しましょうか? 仁美には私の組織に入って貰うって約束があるから良く聞いていてね」

「……」


 僕は何も言わずに洋子さんを睨み付けていた。


「怖い怖い、先に言っておくけど、これから話す事は国に於てのトップシークレットだからね。

 私達に従えないなら、国が貴女達を監禁、もしくは口封じされるから。これは脅しでもなく事実だからね。

 日本警察特殊任務課、これは警察と名を打ってるけど全く違うものと思ってちょうだい。

 私達の仕事は各国から送られてくるスパイの殲滅、及び極秘情報の秘守。これらの任務に於て、日本国憲法、刑事法、民事法、これら全ての法律は一切適応されない。所謂、治外法権を所持しています。

 それから、狩野守について話すけど途中で口を挟まないでくれるかな? 後でちゃんと説明するから。


 狩野守は私達の同僚だったの。組織の中でもトップエージェントだったわ。彼は今から5年前にひとつの大きなヤマを担当していたわ。

 そのヤマで知り合ったのが中国のエージェント張 飛燕、又の名を藤野香織、貴女よ。貴女と守は恋に落ちた。貴女は祖国より守を選び、私達に寝返った。

 でも、組織として簡単にそれを鵜呑み出来る筈がない。そこで、貴女には私達の最先端技術を結集した『M計画』の技術を使って、記憶を読み取り、私達にとって人畜無害な記憶を刷り込まして貰ったのよ。勿論、張 飛燕、貴女と合意の元でね。

 でね、貴女のお陰もあって守の任務は終わりを迎えた。でも、最後の最後でミスを犯し相手方に捕まってしまって……、そして殺されたわ」


 何だよ、その映画の中の話しはよ! スパイとかエージェントとか有り得ないだろ! 狩野守は死んだ?

 だったら僕は一体誰なんだよ……。

 洋子さんは僕の顔を見ながら話しを続けた。


「守の死は私達にとって、余りにも大きかったわ。トップエージェントが死ぬなんて思ってもいなかったもの。だから私達は『M計画』を実行に移した。皮肉にも守はこの『M計画』を守るために死んだのだから。

 まだその時の段階では『M計画』は完全ではなかったの。守の精子と飛燕の卵子を人工受精させて、人工子宮の中で育てた。更にDNAを操作して守のエージェントしての才能と飛燕のエージェントの才能を引き継がせ急速成長かけて1年で23歳まで成長させたわ。

 ………それが藤野仁美、貴女よ。貴女の記憶の殆どが偽りの記憶。貴女は培養液の中でその姿になるまで育てられたバイオテクノロジーヒューマンなのよ。

 通常の人間の20倍の早さで成長して、遺伝子工学の最先端の技術を使って技能を前以て付属出来るのよ」


 洋子さんは僕に向けて拳銃を向けた。そして徐にその拳銃を僕の方に投げ渡してきた。


「ベレッタ92よ、そらから銃弾を3発抜き取ってみて」


 僕は恐る恐るその拳銃を手に取った。見掛けに依らずずっしりと重い。しかし、不思議とこの手に馴染んでいるような気がした。


 ───ここらか銃弾を3発抜き取る……!!


 そう考えると自然と手が動きマガジンを抜き取りそこから銃弾を呆気なく取り出した。


「簡単に出来たでしょ? 貴女は初めて触ったんじゃないかしら? でも簡単に出来た。それが付属能力。その拳銃は狩野が使っていた物、今後は貴女の拳銃よ。

 因みにもう1丁あるから。それは後から渡すわ。狩野は2丁銃だったから……」




 

 

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