第2話

「千秋達、いつも一緒にいるよね」


私は声の主の方を見た。

真っ青な髪の少女がいる。


「勝手におぶさって来るだけだよ」


私は背中に重くのしかかっている荷物を指さした。


「違いますー。ちーちゃんの後頭部が私を吸い寄せてるんですー」


ぶかぶかの制服が私の手に覆い被さる。

私の頭の横にあるほっぺたの方から、やや強めの香水が漂う。


「君、桜、だっけ」


「そうそう」


名前を尋ねたら、そうだ、と青い髪の少女は返してきた。


桜は、灰色のカーディガンを着ていた。首元から白いシャツが覗いている。制服を着ているのではなかった。


「二人とも制服だよね」


桜の服を眺めているのに気が付いたらしい、その後ろからもう一人の、ピンクの髪の少女が顔を出して言った。

こちらも私服だ。


上級生になると奇抜な格好をする人も多く、私達のような一年生の中にはそれを真似て私服で来る人もいる。

ただ、制服を着ていた方が、今は落ち着く。


「私は特に理由はないよ。美夜子は私の真似」


私の肩に乗っている頭を軽く叩きながら言った。「いてっ」と声を上げる。


「……鬱陶しくないか?」


「まあ、暇なときはお菓子とか作ってくれるからなにかと便利だよ。それ以外の時は基本ダラダラしてるけど」


「便利って……」


ひどいな、と桜達が笑う。

別に、ほかに取り柄がない訳じゃない。


運動神経はいいし、勉強はさせればするのだ。

たまに何の前触れもなく「うぎゃあ」と声を上げて立ちどまったり「もう終わった、終わったことだ……」と口にすることを除けば、まあまあ健康的かもしれない。


「じゃ、また」


二人はそれぞれの席についていく。

そろそろ授業が始まる頃だった。


段になった教室の最下部に、そろりそろりと教師が入ってくる。


美夜子はこの学校の生徒でなく私の召使いだったが、講義を聞いていても怒られないし、テストも受けられるのだった。

私の召使いというのは基本的に暇なので、猫や烏は基本どこにいるのかわからないが、唯一、人である美夜子だけはこうしてまとわりついて来るから、授業も自然と受けることになっていた。


が、この子は授業が始まると寝てしまう。

別に放っておいてもいいのだが、美夜子は一度授業を受けると決めたのだから、私は仕方なく毎回起こすことにしているのだった。

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