第五百十一話 突破
相当数の黒い魔物を倒し、七日目の夜。ようやくガストの町へと到着し、俺達は正門を中心に部隊を展開してから話し合いに入っていた。
「ここはラース君とバスレー大臣に一計がある。意見を聞かせてもらえるかい?」
「もう大臣ではありませんよホークさん。わたしとしてはまず門が開くのかどうかを確認すべきでしょう」
「俺もバスレー先生に賛成かな。手で開かない場合、攻城兵器と魔法をフルにぶつけて破壊するのも辞さないつもりだよ」
「そこはアンナにも手伝ってもらうべきですかね」
「私は古代魔法なんて使えないから役に立つかわからないわよ?」
と、魔法兵団の大臣でバスレー先生の友達であるアンナさんは言葉とは裏腹に不敵な笑みを浮かべていた。まあバスレー先生の友達ということで、好戦的な人なのだと思う。
「どちらかと言えばアンナさんは攻め込んだ時に大暴れして欲しいですけどね。さて、となると門を開ける役割だけど……」
<それは我がやろう。ドラゴンの体であれば靄の影響を受けにくいし、なにかあった時、耐えうるだろうからな>
「確かに一理あるか……リリスでも良かったんだけど」
『便利道具じゃないんだから止めてください……』
突入後は各部隊が東西南北に別れて悪魔を探すことを決め、どこへ誰が行くのかを決めた。それぞれ、前回悪魔と戦った人達が騎士達についていくという形に落ち着いた。
ティグレ先生とバスレー先生、リューゼ、ナル。サージュとファスさん、それと兄さんにウルカ。マキナとジャックとシャルル。俺とクーデリカとセフィロ。
この組み合わせでそれぞれ町の中を進軍し、悪魔を見つけて戦闘に入ると同時に俺の作った簡易照明弾を打ち上げて報せるようにした。
照明弾はライトの魔法をルシエールが採掘した石に封じ込めることで実現した。
ヨグスの鑑定でアメジストが魔力の通りやすい石だと判明したのが大きかったかな。
<では行くぞ>
「頼む」
そんな感じで決定したガストの町奪還作戦はサージュがドラゴンに変身するところからスタートし、月明かりの下で光る美しい鱗をしたその体を見て騎士達が感嘆の声を上げた。
「なんと見事な体躯」
「綺麗ですね、彼を見ているとこの戦い絶対勝てそうな気がしますよ」
「なんせドラゴンだからなあ……」
「鼻が高いね」
「自慢の友達だしね。……だけど、やっぱり開かないか」
サージュのことを褒められると一緒に居る俺達は鼻が高い。けど、サージュの力では開かなかった。
<チッ、直接触ると靄が絡むようだな、殴って壊すか?>
「いや、それなら触れない方がいいだろうね。予定通り、杭と魔法でぶち破ろう。アンナさん、準備をお願いします」
「オッケーよ!」
俺はラディナと馬達を引いて門からの距離を取り、一息つく。
「お前達になにかあったら辛いけど、協力頼むよ」
「ぐるう」
「ひひーん!」
「ぶるる!」
俺の言葉に呼応するように勇ましく鳴き、頼もしいと思いながら手綱を握り、もう一度息を吐いてからラディナと馬達へ叫ぶ。
「行け! あの門をぶち破るぞ!」
「グオオオオオン!!」
直後、ぐんと重苦しい巨大な杭をつけた荷台が軽々と動き出した! すぐに俺は手に魔力を込めてその時を待つ。
「行けえええ!!」
リューゼが歓喜の声を上げるのが聞こえた瞬間、杭が門にぶち当たり、地響きのような音が鳴り、門は真ん中で大きくひしゃげていた。
「<ドラゴニックブレイズ>!!」
「<フレイムランス>!」
すかさず至近距離でドラゴニックブレイズを放ち、アンナさんも強力な魔法を撃ってくれた。そのままもう一発ドラゴニックブレイズを放つと黒い靄が吹き飛び、再度放つと門は粉々に砕け散った。
「ふう、やったか……」
「さすがラース君だ! よし、全員突入!」
「「「おおお!!」」」
ホークさんの号令で騎士達が町の中へなだれ込んでいき、荷台から降りる俺にマキナ達が声をかけてくる。
「それじゃ、またねラース! 絶対倒してくるから」
「後でなラース。あの野郎は今度こそ俺が倒す!」
「へっ、俺に先を越されないようにな」
「わたしの獲物ですけどね、それでは行きましょう」
「わしらの修行の成果、みせてくれるわい」
「みんな気を付けて!! よし、俺達も行くぞクーデリカ、セフィロ」
「うん!」
「任せてよお兄ちゃん!」
薄暗い町にランタンの灯が散っていく中、特大のライトを頭上に掲げて俺も町の中へ入っていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます