第四百七十一話 キャンプ気分で方針決定


 <うむ、だいたい把握した。ルシエールとノーラ以外は戦闘能力の強化だな。それと装備品か、ロイヤルドラゴンの素材があれば世界でも有数の武具ができるだろう。……世界征服できるわよ?>

 「しねぇよ!? だけど、国を相手取って余裕で倒せるってなるとそういうことを考える奴もいる、か」

 「ああ、だけどそれをすると世界の鼻つまみ者だ。無視されるどころじゃない」

 「だな」

 「ふふ、懐かしいね」


 俺とリューゼは子供のころにそういう感じになっていたことがあるし、俺の友達達は自己欲のために誰かが泣きを見るのを良しとしない。

 ロザの世界征服は戒めみたいなものなのだろう。その力を殺戮に使うようなことがあれば、ドラゴンが報復すると言いたいのかもしれないな。


 「たーおーれーるよー!」


 そんな話をしながら、クーデリカの【金剛力】や俺とベルナ先生の魔法で木を切り倒していく。それをきれいに削ぐルシエールとノーラのコンビ。

 そしてその木をサージュが運んで簡易的な小屋の材料にする。

 

 兄さんとノーラとアイナや、ティグレ先生とベルナ先生といった各家庭分を建てる計画だけどこの分ならすぐに作れそうだ。


 「リューゼはナルちゃんとかあ」

 「な、なんだよ、ニヤニヤするんじゃねえよルシエラ!」

 「いいじゃない、将来の相手が決まっているんだしー?」

 「そんなんだからデダイトさんに見向きもされないんだよ……」

 「……!」

 「……!」

 「ちょっと、お姉ちゃん辞めてよ!?」

 

 「マキナちゃんにはラース君が居るからいいよね。わたしとルシエールちゃんも頑張ったんだけどなあ」

 「……返事をしにくいからやめてよクーデリカ……」


 ……まあ、ちょっとしたいざこざはあったものの家屋に関しては問題なく完成。


 「なんとかなったな。まあ一日でできるとは思わなかったけどよ」

 「人数も居ますし、サージュとロザさんも手伝ってくれましたしね」

 「兄さんの言うこともわかるけど、あのドラゴン自分の寝床をウキウキしながら作ってたよ……」


 人間の家屋に興味があったらしいロザはドラゴン形態には戻らず、自宅も作ってくれと俺達に頼んできたので作ったけど。


 「さて、それじゃあ福音の降臨とベリアース王国がいつ動くか分からないし、修行と行こうかのう。お風呂もあるといいが、ま、最悪転移魔法陣で王都に戻ればよいか」

 「そうですね師匠。ロザさんが相手をしてくれるんですか?」


 マキナ達、特にファスさんが早速とばかりに尋ねるとロザは、ふむと顎に手を当ててから口を開いた。


 <そうだな、まだ陽は高いし一度やることを整理するか。とはいえ、私は強者であるだけで修行の仕方など分からん。とりあえずサージュはダンジョンへ送るとして、ルシエールは私と鉱石探しだな。ついでに温泉をここに引いてみるか?>

 「温泉! あるの?」


 女性陣、特にクーデリカが食いつき班分けが決まる。


 戦闘修行組は兄さん、マキナ、ファスさんにティグレ先生夫妻、リューゼとナル、そしてセフィロが。

 鉱石探索組はルシエール、ルシエラ、クーデリカ、ジャックにロザという形になった。


 <先にサージュをダンジョンへ連れていくけど、どういった相手が欲しいか言ってくれれば呼ぶぞ?>

 「そうだな……パワー型のドラゴンと素早いドラゴンが居てくれると助かるかな? そういえばドラゴンってスキルは無いのか?」

 <ないな>

 <あるぞ>

 「……」


 俺の言葉に相反する答えが返ってきて俺達は黙り込む。


 「サージュにもあるんだねー!」

 <むう、我は知らんぞ……>

 <まあ、人間のスキルと違って産みの親から継承する力だから意味合いとはちょっと違うと思う。一子相伝という言葉が人間にあるが、それに近いな>

 「わしら格闘家に似ておるのう」

 <でもサージュは産まれた時に親が居なかったみたいだし、知らないのも無理はないか。ロイヤルドラゴンにそのあたりも尋ねてみるといいだろう>

 <わかった>


 サージュが返事をしたところで、俺もそろそろ戻るかとみんなに声をかけた。


 「方針が決まったし、俺はそろそろ帰るよ。アイナはこの拠点から動かずに兄さんの言うことをちゃんと聞くんだぞ? サージュも居ないし」

 「はーい! シュー達と遊ぶから大丈夫だよ」

 「グルル」

 「わふ」

 「……ダメみたいだぞ」

 「えー、なんで!?」

 「シュナイダー達も修行するってー」


 シュナイダーとラディナはアイナ言葉に首を振り、遊ばないと宣言していた。どうやら、今度の戦いは参戦する気らしい。

 

 「ティリアちゃんとアッシュがいるからいいじゃないか」

 「ラースお兄ちゃん、ボクもいいよ! ボクは修行してもしなくてもあまり変わらないから、組手だっけ? する時の人数合わせくらいかな」

 「ならいいだろ、アイナ?」

 「うー、うん!」

 「よし!」


 アイナが元気よく返事をしたので頭を撫でてやると、ロザが俺へ言う。


 <ラースは戻るのか? お前にはサージュと一緒にロイヤルドラゴンの下へ行ってもらおうと思っていたのだが……>

 「? 別に俺が行ってどうにかなるものでもないんじゃないか?」

 <ダンジョンだと言ったろう。サージュ一人で到着できるか分からないからな>

 <まあ、なんとかやるから大丈夫だ。ラースにもやることがある>

 <……転移魔法を敷くと言っていたな。明日、もう一度来い、いいな>

 「食料は必要だろうからちゃんと来るよ。それじゃみんな、頑張ってくれ!」


 兄さんの家の横に作った転移魔法陣用の敷地を通り、俺は王都の庭へと帰還する。ここを使っていいというのは国王様へ事前確認も済ませている。

 今後、向こうの状況によっては騎士達をドラゴンと戦わせて戦力増強を考えているようだけど、話が分かる相手だから期待はできるかもしれない。


 「……ロザと戦って勝てたら、みたいな縛りはできそうだけど」

 「あれ、ラースじゃないか」

 「こんにちは!」

 

 俺が苦笑していると、オルデン王子とライド王子が声をかけてきた。どうやら散歩をしていたらしい。というか王子同士で訓練していたせいか仲がいい二人である。


 「こんにちは。竜の棲む島へ行ってきたよ」

 「あ、そういえばそうだっけ? いいなあ、僕も行ってみようかな。それを踏んだら行けるんだよね」

 「俺が国王様に怒られるから止めてくれ……」

 「はは、そうれもそうだね。ラースは今からどうするんだい?」

 「今から報告に行くよ」

 「なら、その後お昼ご飯、一緒に食べないかい?」


 オルデン王子がたまにはいいだろ、と目で訴えてきたので俺は承諾しそのまま一緒に謁見の間へと向かう。

 お昼を食べたらバスレー先生とレッツェルを連れてアイーアツブスのところへ行くかと城内を進んでいった。

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