第四百六十七話 激戦地?
「ギャォォォォ!」
「行かせるか!!」
腕は無いドラゴンが急降下を始めたサージュに向かって突撃を始める。数は二体、大きさはサージュほどではないけどかなり大きい。ワイバーンってやつだっけ?
俺も急降下をしながらファイアーボールやハイドロストリームでワイバーンへ攻撃を仕掛ける。
「グルォ? ……ギャアア!」
「ん!?」
「ギャォォウ!」
ワイバーン二体はお互い顔を見合わせた後、サージュを無視して俺に向かって飛んできた。
「うわっと……!」
「ギャオゥ!」
「こっちもか!? うわああ!?」
「グルフフウ!」
一頭目が高速で突っ込んできたのを回避すると、もう一頭がバランスを崩した俺をひき逃げしていき、きりもみ状態で落ちていく俺。
二頭が俺を見下ろす形になり、ひき逃げした方がなんとなく得意気に笑ったように見えた。
「む……! <ファイアアロー>!」
「グルォ!」
「くそ、流石にドラゴン、いい動きをするな……! そっちだ! <ファイアーボール>!」
「グォウ!?」
外したか……! 先読みで撃ちこんだけど、ギリギリでかわされた。しかし、今のは結構焦っているように見えた。なら、こうしてみるか?
「ギェェェ!」
「グルォォオ!」
姿勢を制御し、真向かいにワイバーンを見据えると、俺の周りで旋回を始め攻撃機会を伺う。徐々に輪を狭めて一気に、という作戦だろうか? 喋りはしないけど、先ほどの連携といい賢いことに変わりはないらしい。
「まずは<ファイアーボール>!」
「ギェエ?」
「ギャェハハハ……!」
俺はやつらへ弾速の遅いファイアーボールを放つ。すると、ワイバーン達は首を傾げて笑う。
「これでも笑っていられるかな! <ハイドロストリーム>!」
俺は続けてファイヤーボールへハイドロストリームを放った。高温の火球に冷たい水……それがぶつかるとどうなるか――
「グェェェ!?」
「ギェェェ!?」
――輪を縮めていたワイバーン達の間で水蒸気爆発が起こり目を回す。俺は耳を塞いでいたので大丈夫だけど、空中なのでよく響く。
「悪いが落とさせてもらうぞ!」
「ギュェ!?」
レビテーションで一気に近づきサージュブレイドで一頭目の翼を切り裂き、血が噴き出すと落下を始めた。俺はこいつに掴まっておけば攻撃はしてくるまいと思い首に抱き着き一緒に落下。こうしていれば攻撃できまい。
「グルォォォ!!」
「なに!?」
後は寸前で飛べばいいと思っていると、思惑とは裏腹にもう一頭が勢いよく俺に襲い掛かって来た!
「こっちに来るな!」
「グギャァァァ!」
「痛っ!? う……?」
ワイバーンの尻尾を剣で払っていると、棘が俺の腕を掠めて血が出た。その瞬間、俺は体が痺れるのを感じる。
「ギャォォォォス!」
「……毒か!? <ヒーリング>! はああああ!」
「……グギャ!? ……!!」
「まだやるか……! おお……?」
もうすぐ地上というところで、ワイバーンが俺ごともう一頭を足で掴み、大きく羽を羽ばたかせると、そのままゆっくり地面に降り立った。
「グルルル……」
「お前、こいつを助けたかったのか?」
「グルゥ」
「仕方ないなあ<ヒーリング>」
「!!」
目を回しているワイバーンに回復魔法をかけ翼を治してやり、俺は様子を見ていたワイバーンへ言う。
「賢そうだから言うけど、俺達ここに修行しにきたんだ。あっちのドラゴンは友達だ。お前達を殺しに来たわけじゃないから悪いんだけど、大人しくしていてもらえると助かる」
「グル……」
「お、なんだよ。くすぐったいぞ……」
俺が言い終わると、ワイバーンは俺に鼻をすり寄せて短く鳴く。分かってくれたようだと安堵し、すぐに遠目に見えるサージュ達に目を向ける。
「いっぱい囲んでるな……殺さないようやれるか……?」
恐竜に似た翼の無いドラゴンなどがサージュ達を囲んでいて、それをサージュが威嚇し、マキナ達も戦闘態勢に入り、向かってくる敵を追い返す。
だが一触即発、数でかかられたら負けないまでも面倒なことになりそうだと舌打ちをする。
「空から魔法で地面を……って、なんだよ」
「グルル」
「うわあ!?」
ワイバーンは俺の襟を咥えて上空に放り投げ、すぐに浮いて背中に乗せてくれた。そのまま低空飛行でサージュ達の下へ向かい――
「ギャォォォォン!」
――と、大気が震えるほどの雄たけびを上げた。
<むう、ラースか!? どうしたその者は?>
「いや、よく分からないけど急に俺を背に乗せて飛び出したんだ。今ので他のドラゴンが散っていったな、降ろしてくれ」
巨大サージュの目線で飛んでいたのでそう言うと、ワイバーンはゆっくりと降下を始めて無事、地上に降り立った。
「ふう……」
「ラース、このドラゴン倒したの?」
「ああ、一頭は向こうで眠ってる。尻尾に毒があるから気を付けてくれ、ちょっと麻痺した」
「え!?」
「へ、平気なの?」
マキナに経緯を説明しているとルシエールと一緒に心配そうな声を上げる。俺は笑いながら手を握り、大丈夫なところをアピールしておく。
「にしても、本当にドラゴンの島だな。そいつもだけど、さっきのでけぇトカゲみたいなのも強そうだったぜ」
「う、うん。サージュよりも小さいけどわたし達を見て涎を出してた」
「まあ、あれくらいならまだ大丈夫だけど、あれで終わりって訳じゃないわよねえ。ダンジョンがあるって言っていたしぃ?」
「とりあえず拠点を作るか、ダンジョンを探すところからスタートだしな!」
何故かワクワクしているティグレ先生が荷物を持って歩き出すと、ふっと大きな影が俺達の頭上に現れた。
曇ったのかと思って見上げるとそこには――
<赤い、ドラゴン……!>
<……>
俺達を見下ろす、真っ赤な鱗をしたドラゴンが飛んでいた。……全然気づかなかったぞ……いつの間に近づいて来たんだ……?
「やる気かのう? さっきのトカゲは逃げてしまったから、ワシはいいんじゃが」
「師匠、あれは一人じゃ無理じゃないですか……?」
ファスさんが一歩前へ出て指を鳴らしていると、ワイバーンが頭を下げた後、口を開いた。
「ニ、ンゲンに、ワレラがドウホウよ。アノカタはチジョウのバンニン、バーンドラゴンさまダ。ハナシをキイテモラウとイイ」
「バーンドラゴン……というか喋れたんだな」
「スコシ、だけナ。オリテコラレルぞ」
開けた砂浜に、バーンドラゴンと呼ばれた真っ赤なドラゴンが俺達の前に立った――
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