第四百十一話 混乱する町
「くそ、どうなってんだこいつは……!?」
別行動をしているジャック、ルシエール、ルシエラの三人は私服を着た福音の降臨を追っていたが、追っていた人物は花火の音と同時にどこかへ向かって急に駆け出した。
三人はすぐに人物を捕まえようとするが、町の出口が騒がしいことに気づき目を向けると、そこにはどこから現れたのか、大量のゴブリンと魔物が町に広がっていくのが見えたため武器を手に戦闘をしていたのだ。
「<ファ、ファイアアロー>!」
「無理するなルシエール! お前がもらったサージュ装備は帽子と胸当てだろ? 俺達の後ろで援護を頼むぜ」
「う、うん! お姉ちゃん横!」
「せい! ふう……ギルドの人達も戦ってくれているみたいだけど数がやばいわね、多すぎるわ。一体どこから……? あの花火のせい?」
「考えている暇はねえぜ、戦えない人を守らないと! ルシエラのスキル、コラボさせてもらっていいか?」
「【増幅】を? どうするの?」
「こうするんだ【コラボレーション】! <ハイドロストリーム>!!」
「なるほどね、ならその後は……!」
ジャックはルシエラの手を握ると、普段は使えない魔法を繰り出し目の前のゴブリンとジャイアントビー、暴れイノシシを押し流し道を開け、ルシエラはすぐに自身に【増幅】を使い、ゴブリンたちの息の根を止めて行く。
「ジャック君凄い!」
「ラースなら一瞬で終わらせられるんだろうが、俺にはこれが精いっぱいだけどな。……こいつら一体何が目的で町に?」
「<ファイアアロー>! 町に魔物が入ってくることでも珍しいのにね……。あ! お婆さんが!」
ルシエールが慌てて駆け出した先に、ジャイアントビーに襲われそうになっている老婆が居た。広場を散歩していたところにこの騒ぎとなり、他にもあちこちで悲鳴が上がっている。
「ひい!?」
「ギャァァァ!」
「止めなさい! <ファイアーボール>!」
ルシエールは斧を持ったゴブリンにファイアーボールを直撃させ、絶命させる。
「ゲェェェェ!?」
「大丈夫ですか!」
「あ、ありがとうよ、商会の娘さん……これは一体どういうことなんじゃ……」
「わかりません。今は逃げましょう……!」
ルシエールが迫る魔物を魔法で牽制しながらジャックとルシエラの下へと戻る。ルシエールに近づけさせないようジャックとルシエラが奮闘しているのが見えた。
「サージュのショートソードじゃなきゃ速攻殺されてたな!」
「まったくだわ! そろそろ先生達も出て来てくれないかしら……私達だけじゃ流石に無理だわ」
「お姉ちゃん! <ウォータージェイル>!」
「おっと、ありがとルシエール。はあ……ちょっときついわね」
見えるだけで五十体はおり、うんざりした顔で呟くルシエラ。群れをつくって襲ってくるのがゴブリンなので集団であることに違和感はない。数も集めればこれくらいは居るだろうとも。
しかし、ひとつの集団でこれほどの数がいて、襲ってくるのは聞いたことが無いため、三人は訝しみながら襲ってくる魔物を倒していく。
伊達にオヴィリヴィオン学院を卒業しておらず、ルシエラにいたってはギルドで依頼を受けることもあるため目の前の敵を倒すことだけなら難しくない。
「そら! くそ、こういうのは魚屋の仕事じゃねえってんだ! ゴブリンじゃなくて魚を捌かねえと!」
「グギャァァァ!」
「だからくんなっての!!」
ジャックはショートソードを上手く扱い、ゴブリンの武器を受け流し、バランスを崩したところに急所を突くという一撃に重視した戦い方をする。ルシエラは長剣を縦横無尽に振り回し、一見めちゃくちゃに見えるが的確に武器をもった腕を斬り落としたり、魔物の頭を斬撃で潰していく。
「きゃ!? やったわね!」
「お姉ちゃん気を付けて! きゃん……!? <ファイアアロー>!」
ルシエールも魔法で迎撃し、後ずさりながら囲まれないよう下がる。すると、ルシエラが苛立ちながら口を開いた。
「あーもう! キリがないわね! ジャック一気に突っ込んできなさい!」
「死ぬだろうが!? でも、一気に魔法とかで殲滅しないと囲まれたら終わりだぞ……!」
「あ!」
そこでルシエールが小さく声を上げ、ポケットから赤い宝石を取り出した。
「どうしたのルシエール!」
「こ、この前レオールさんと一緒に来たお客さんが宝石に魔法を詰める方法を教えてくれたんだよ! 私はまだできないけど、その時に作ってもらった宝石があったよ!」
「マジか、どんな魔法!?」
「や、やってみるね! えい!」
ルシエラが大人の握りこぶしほどの大きさをした宝石をゴブリンの群れに投げ込み、ゴブリン達はキレイな宝石に目を向けてそれを手にしようと手を伸ばす。そしてゴブリンが手にしようとした瞬間、ルシエールが目を瞑って叫んだ!
「解放せよ! <エクスプロージョン>!!」
「「え!?」」
ルシエールの魔法名を聞いて、ジャックとルシエラが慌ててお婆さんとルシエールと一緒にその場に伏せる。そしてその瞬間、爆音が響き渡った!
「「グギャァァァ!?」」
爆心地に居たゴブリンは跡形もなく吹き飛び、周囲にいた魔物やゴブリンは爆風に弾き飛ばされて家屋や木に叩きつけられ気絶、もしくは絶命した。
「わ、び、びっくりした……」
「びっくりしたのはこっちだよ!? エクスプロージョンとか上級もいいところじゃねぇか!?」
「でも、あいつら攻めあぐねているわ。今の内に住宅街の方を助けに行った方がいいかしら」
「そうだな……ん? ありゃなんだ?」
ジャックが見た方向……そこは何故か道を開けるように動くゴブリン達がいた。直後、ローブを着た福音の降臨が麻袋を持ってその間を駆け抜けていく。
するとゴブリン達は次に走って来た二人組を阻むように道を塞ぎ、ジャックは声を上げた。
「ありゃリューゼだ!? ルシエラ、リューゼと合流しようぜ」
「そうね! ほらほら、死にたくなかったらどきなさい! どいても死なすけど!」
「お姉ちゃんが悪い人みたいだからそういうのは止めよう?」
ルシエラが【増幅】を使い、剣を振り回してゴブリンを威嚇して道を開いていき、やがてリューゼとナルと合流を果たす。
「リューゼ!」
「ジャックか! こりゃなんだ!?」
「俺にも分からねえ、そっちの状況は?」
「麻袋を持ったやつを見なかったか? ティリアちゃんが攫われてその麻袋に入っているんだ」
「ほ、本当に!? さっきあっちに行ったよ!」
「まずいわね……ティグレ先生がこれを知ったら……」
ルシエラが目を瞑って惨劇を思い浮かべ――
「面白くなりそうね。大福の降臨だかなんだかしらないけど、思い知らせてやらないと!」
「だ、大丈夫かな……あ、おばあさん、近くのお家に匿ってもらってくださいね」
「ありがとうよ、お嬢さん達も気を付けてね」
お婆さんの言葉にルシエールが微笑み、加わったリューゼ達がゴブリン達を蹴散らし、福音の降臨を追う。
――そして出口付近に到着したリューゼ達はついに首謀者のエレキムと対峙する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます