第百四十一話 最終試合開始
――休憩があった第三試合が終わり、俺達は第四試合へと赴いていく。相手はバスレー先生が副担任を務めるEクラスだ。
[うぉらぁぁぁ! ザッツ君、根性みせんかいぃぃ!]
「んなこと言ってももう疲れがたまってて無理だっての!?」
[だから根性だっつってんでしょう!?]
「無茶言わないでくださいまし!?」
まあ、こんな調子でバスレー先生が盛り上がっていたけど、Eクラスは全体的に体力が低いようで、余裕の三人抜き。
トップで俺と戦ったエブリィという片目が隠れているくせっ毛の子が相手だった。は早期決着を付けようと突っ込んできたけどパワーもスピードも無く、明らかに疲れていた。
「ドラゴンファング!」
「え、ど、どっち……!? あああ!?」
とまあ、ティグレ先生が得意とする左右フェイントを繰り出しあっという間に勝負がついたんだよね。
スピードさえあれば裏の裏の裏みたいなのができるため、初見で見切れるはずもなく、早々にリタイアしてもらった。
勝手に名前をつけたんだけど、ほぼ左右同時に打ち付けるので、噛んでいるような感じかなとこの技名にした。ティグレ先生は何も言わず笑い、テントでサージュが喜んでいるのが見えた。
そして二人目のマキナは同じ女子生徒のオネットと戦い、これもあっさりと下す。
「くっ……スキルを使っているのに当たらないなんて!」
「目線で狙いがバレバレなのよ! サージュの火球に比べたら先が丸い玉になっている木の矢は怖くないしね!」
「弾かれますわ……!? こうなれば――」
こんな感じで終始圧倒していた。
はちみつとか以外に何が入っていたのか分からないけど、テンションMAXでオネットの武器である弓を回避・迎撃し、懐に飛び込む様は正直凄い。
オネットは木の投げナイフやショートソードなんかも持っていたんだけど、一対一でさらにマキナ相手では自分の能力を半分も出せていなかったように見えた。
「ラース君、勝ったよ!」
「凄かったね、調子いいみたいだしリースのおかげかな?」
「あの子の名前は出さないで」
「うん、分かった……けど、なんで抱き着くのかな?」
「んふふー」
……テンションが高いせいかマキナは妙に俺の隣に居たがっていた。クーデリカと挟まれて観客席から口笛が飛んでくるのが少し恥ずかしかった……
それはともかく最後のウルカも霊術に頼りきりではなく、魔法と剣を駆使してカナールといい勝負を繰り広げての勝利だ。
試合風景は――
「<ファイア>!」
「うおっと、そんな火じゃ俺は倒せな――」
「そっちに避けると思ったよ!」
「いてぇ!? こいつ、小さいくせに!」
「オーグレさん!」
カナールがファイアを避けると、すでに回り込んでいたウルカに一撃を浴びせられる。しかし、戦意を失うほどのダメージではないためカナールが大剣で反撃に出た。
しかしそこでウルカが叫び、地面からスケルトンが出現し大剣を白刃取りで受けた。
「んな馬鹿な!?」
「ええーい!」
「くそ、やるなお前!」
――そんな感じで一進一退の攻防があり、最後は体当たりからの場外でウルカの勝ち。
というかスケルトンがめちゃくちゃいい仕事をする……。二対一になるなんて誰が予想できるだろう。スキル効果なので不問だったみたいだけど、仲間の俺でもずるいと思う。
まあ、スケルトンのオーグレさんは空気を読んで、ウルカが指示をだした時だけ攻撃を行う紳士だったけど。生前がどんな人だったのかすごく気になる。
そして逆サイドで行われていたBとDクラスの戦いはBクラスで終わり、俺達が勝ち点三で、Bクラスが勝ち点二。C、D、Eが勝ち点一となっていた。
この時点でAクラスは優勝確定だけど、俺達は最終戦のBクラスとの戦いに望む。Bクラスに負けてたとしても四ポイント入り65ポイント。Bクラスは5ポイント入っても63ポイントだから、もう無理をする必要はないけど、Bクラスは気合十分という感じで俺達を見る。
[さあ、四試合目のBとD、AとEの戦いも終わり、いよいよ五試合目、最終決戦になりましたぁ!]
[ここでCクラスとDクラス、どちらが勝つかで三位が決まりますねぇ]
[Eクラス! まだあきらめるんじゃないですよぉぉぉ! さあ、それでは無差別戦闘競技、最後の試合と行きましょう! 大事なのはポイントじゃない! 全力を尽くしたというその気持ちっ]
「テンション高いなぁ。なんで泣いているのか分からないけど……。まあいいや、それじゃ順番を決めようか?」
俺がそう言うと、リューゼが腕組みをしたままフィールドへ目を移し、口を開く。
「俺が行く。どうも待っているみたいだしな?」
フィールドにはすでにナルがダガーを両手に持ちこちらを見ていた。彼女がどうしてリューゼを気にしているのか分からないけど、ここは任せるのが一番だ。
「頼むよリューゼ」
「ああ、何でかあいつ俺を避けるんだよなぁ」
「なんでだろうね? それよりも頑張ってね、リューゼ君」
「おう、ウルカに負けていられねぇしな!」
そう言って木大剣を担ぎフィールドへ向かうリューゼ。ナルは近づくリューゼを見ながらぐっとダガーを握る。あの時は三つ編みだったけど、今日は紫の髪の毛をお団子状にしてまとめ上げていた。眼鏡はそのままだ。
「待たせたか?」
「さっき立ったところ。ようやく直接戦える機会が来たわね」
「なあ、俺、お前に何かしたか?」
「……! くっ……覚えていないのね……! いいわ、あなたが勝てば教えてあげる」
「お前と話したことあったっけかなあ。……ま、勝てばいいってんなら話は早ぇ!」
[なんだかデートの待ち合わせと、喧嘩のようなやり取り! 羨ましくなんかありませんが、ナルちゃんはなにかリューゼ君に含むところがあるようですねえ!]
[あ、そうだ今晩の夕食、ティグレ先生に聞かないといけなかったわねぇ!]
[ちくしょぉぉぉぉぉ!]
実況はさておき、笑いながらリューゼが大剣を構え、ナルがダガーを逆手に持ち胸の前でクロスさせる。 防御しながら突っ込むのかな? そんなことを考えた矢先、ティグレ先生の合図がかかった。
「始め!」
それと同時にふたりが声をあげる。
「【魔法剣:ファイアソード】!」
「【氷結】!」
[おおっと! ナルちゃん、ダガーをスキルで凍らせて氷の刃を作りました!]
[これは危ないかもしれませんねぇ! ティグレ先生、ご注意を]
「任せとけ」
ティグレ先生が目を細めて二人の様子を見る。燃える剣と凍れるダガー。この二つがぶつかったら、規模は小さいかもしれないけど水蒸気爆発が起こるのをベルナ先生とティグレ先生が見越しているのかもしれない。
「……来ないならこっちから行くぜ?」
「……」
最初に動いたのはリューゼだった。ナルはどう動く……!
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