第2話 金色の君
死んだらどこにいくのだろう?
天国もしくは地獄?
それともただ「無」になるだけ?
どちらにせよ、生きているよりはましなはずだ。
深く息を吸い込み、吐き出しながら寝返りを打とうとして、右腕に走る激痛で飛び起きた。
(「…生きてるっ?!」)
オレは見知らぬベッドの上にいた。
痛みを感じて初めて、生きていることと右腕が折れていることに気がついた。折れた右腕は添え木と包帯で手厚く手当てされている。
ここは一体どこだろう。状況を整理しようと顔をあげると、ベッドの足元、壁沿いの窓辺に手を付き佇む金髪姿が目に入った。
(「あの時の!」)
浜辺で意識を失くす直前に見た金色の輝きを思い出す。それではあれは人間の髪だったのだ。
オレが飛び起きた気配に気がつき、金色の君は窓辺から手を離してこちらに振り返り始めた。
あの金色がゴールデンレトリーバーでは無かったと分かった今、ここまできたら金髪美女であってほしい。
心地のいい風が窓から吹いてきて、金色の君の豊かな金髪をさらった。なびく髪の一本一本が太陽光を受けて燦燦と輝く。風とともに部屋に吹き込んできた白い可憐な花びらが、踊るように金色の君に降り注いだ。まるでスローモーションのようにゆっくりと、そしてはっきりと。オレはその光景に見惚れていた。
ついに金色の君が振り返る。
「――野郎じゃねぇかっ!!」
久しぶりに声を出すはずだがスパッと言葉が出てきた。野郎じゃねぇか。
金髪野郎は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにニカッと笑いかけてきた。
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