着の身着のままラッキー・アンラッキー

イツミキトテカ

第1話 出会いは浜辺で

 オレは今浜辺にいる。


 目の前には白い砂が広がり、桜色の小さな貝殻の上を、赤いカニが踏み越えて去っていった。

 潮の香りが強く鼻を刺す。ザアァザアァと寄せては返す波の音が聞こえる。

 口の中は海水でしょっぱく、砂でジャリジャリしている。


 オレは今、浜辺に打ち上げられている。


(「また死ねなかった」)


 一瞬そう思ったがまだ希望はある。

 体が動かない。力が全く入らないのだ。

 このままこの浜辺に放置されれば、いずれ満ち潮になり溺れ死ぬだろう。


 そしてオレは、この状況で誰かに見つけてもらえるほどの幸運の持ち主ではない。


 波の音が遠のいていく。潮の香りももうしない。目を開けば、一面赤黒い砂嵐。もはや何も見えていない。

 満ち潮を待たずして、先に体力が尽きるかもしれない。


(「最期に見たのがカニとはな」)


 蝋燭の火は消える間際に一際大きく揺らめくのだ。それと同じで一瞬意識が戻っただけ。もう長くはない。

 いよいよ意識が持っていかれる。


(「一度くらい、浜辺で金髪美女とランデブーしたかった…」)


 遠のく意識の中でそんなことを思ったのは、一瞬金色に輝く何かが視界に入った気がしたからだ。

 

 金髪美女? 金髪ブス?? はたまたゴールデンレトリーバー???


 ここで意識がぶつんと切れた。

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