⑰16:36

電話。

「はい」

『おまえが。おまえなのか。本当に』

「誰?」

『三年前。山に関する画家と会ったことは。その相手と、恋愛関係にあったか』

「あなたは」

『その人の下ネタ敏腕女マネージャだ。いいからこたえろ。はやくしろ。たのむから』

「そのひとは、私の初恋相手です。その人に会うために私は」

『そうか。お前なのか。なんてこった』

「あの、せめて名前を」

『いいかよく聞け。山オナニー野郎がこの街にいる。おまえの公演をさっき見て、なんか変な勘違いをしたらしい』

「あの」

『追ってくれ。たぶんあいつは前勤務してたコンビニに顔を出すはずだ。はやくしろ。あいつの創作の源泉は他者を愛する心だ。山を通して誰かを恋い焦がれてる。たのむ』

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