⑱16:59

コンビニに、駆け込んだ。夕方。

「甘味さん」

四年前も、こうだった。いなくなったあのひとを追って。

「あのひとは」

四年間。自分を磨き続けた。あのひとの絵を見て、あのひとに釣り合う女になるために、全てを懸けた。

「ごめん融ちゃん。引き留められなかった。もう会うつもりはないし連絡もしないでくれって」

喉から出かかった嗚咽。歯をくいしばって耐えた。

「あのひとは」

まだだ。まだ。

「あのひとはどこに」

「わからない。ごめんなさい」

「くそっ」

落ち着け。落ち着くんだ私。ここで終わるわけにはいかない。

「美田先輩。お菓子をください。あとお茶」

奥から美田先輩が走ってくる。

「行きなさい融。山さんはたぶん空港よ。あのひとは山のひとだから、何をやっても山に戻る。飛行機を腕ずくでも止めてきなさい。はいこれお菓子とお茶」

「ありがとうございます。行ってきます」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る