⑧こわれる

わかった。

あのひとが、私の感情を分かると言った。それと同じで、いま、目の前にいるあのひとの、感情が、わかってしまう。

「え」

「そうか、中学生か」

「待って」

近付いた。抱きつく。

「まって」

差し障りがあるといった。いまのあなたは。差し障りがないのか。目に、私の姿が、写らないのか。

「なんで」

「なんでも何も、あなたが中学生で、私が二十代後半だからですよ」

年齢。

年齢に差し障りが。

「なにそれ。十才ぐらいしか」

「夜間に女の子がひとりで外出しちゃいけません。もうここに来てはいけない」

「なんで」

「あなたが中学生だから」

「中学生だからなんなの。あなただって」

「やめておけ。苦しいだけだぞ。そこらへんの同世代と青春を過ごせ」

「なんで、どうして」

「わるかったな、俺が声をかけたのが、間違いだった」

「まって」

「すぐに帰れ。次ここに来れば、学校にでも電話するぞ」

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