④夜、コンビニ

「お茶、飲みます?」

「飲みます。踊ると喉かわいちゃって」

「アイスもありますけど」

「アイスっ」

「お茶と一緒にどうぞ」

「ありがとうございます」

年齢の分からない、女の子だった。小柄。ショートヘア。お茶を飲んでアイスを食べている姿は高校生ぐらいに見えるが、踊りはじめると明らかに二十才から三十才ぐらいの整った姿に見える。

「おいしい」

事務の仕事がどうこうと言っていたから、おそらく大学生ぐらいだろう。秘書検とか簿記とか言っていたし。

「毎日の楽しみなんです。ここで踊るのが」

「そうですか。よかった。私もあなたが踊るのを見ていると、夜勤も悪くないなって思えます」

「うふふ」

「近いです」

「あっごめんなさいまた汗が」

この女の子の汗。不思議な匂いがする。登山した霊峰の、山頂の香りに似ているかもしれない。

「今日はタオルを持ってきました」

彼女が、私の首筋についた彼女自身の汗を拭き取りはじめる。

「あの」

「あっのど動いた」

喋れねぇ。

「はい。大丈夫です。どうぞ」

「そのタオルで、ご自分の汗を拭えばよろしいのでは?」

「え」

女の子。目がおっきく開く。

そして、頬を赤くして、縮こまる。

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