第20話 エターナルフォースブリザード

 誰だ? 俺の体を揺らすのは?

 

「う、うーん……」


「お気づきになりしたか!? 突然鼻血を出して突っ立ててびっくりしました。」


 なんだ、大臣か……


「なっなんだと……俺がやられたというのか……」


「えぇ、べらぼうに。気を失ってましたから。」


 くぅ……俺は何をされた?

 いきなり良い匂いのぷるぷるした饅頭で窒息させるカーナの魔法にしてやられた訳か……

 あの女、今どこにいやがる。

 もう一回魔法を受けてやろうじゃないか。


 いや、決してもう一回、受けたいとかじゃないから。


「で、カーナの奴はどこにいる?」


「あっ、カーナちゃんから相談ありまして、今日は新人の子と一緒に接客します。って呼びに行きましたよ。」


 ちゃん?

 いきなり馴れ馴れしいなこいつ。

 ふむ。新人。

 なるほど、OJTってやつか。どこの業界も大変だな。


「そうか。状況は把握できた。ありがとう。まさか先制攻撃をくらうとは迂闊だった。これが、不可避の一撃って奴か。」


 むむむ。

 近づいてきた瞬間に投げ飛ばすくらいの覚悟は必要だったかもしれない。

 間合いに入り込むや、抱きついてくるとは思わなんだ……

 油断していた。これが魔物だったら俺は、命を落としていたぞ。


「それにしても、フェルナンドさん、良いなぁ。カーナちゃんにパフパフされるとか、あー、私もされたい!」


 「お前、誰?」ってくらいキャラ変しすぎでは? 地団駄踏むキャラじゃ無かったろ?

 俺は硬派なキャラで行くからな。

 こんな変態とは一緒にして欲しくないものだ。

 まずはクールになれ。


「そうか。まぁ、確かに悪くなかったよ。」


 どうだ? 今の最高にクールだろ?

 ちょっと余裕がある感じを見せて、余裕があるように斜めに構えながら答えた。


「フェルナンドさん、何を今更、高く止まっちゃって〜。さっきぱふぱふで鼻血まで出して喜んでた変態って思うとカッコつけてるとダサいですね。」


 ぐさっ!!?

 的確に貫いてくるな、こいつ……

 いかん。いかん。


「まぁ、そういう日もあるさ。」


 しかし、新人か。

 また女が出てくると思うと、ちょっと緊張してきた……


「あ、フェルナンドさん、緊張してますか?」


 変な所で察しのいい奴だ。


「そんな事はないさ。俺は、あんたみたいに女の子が好きって訳じゃないからな。」


 おい。なんだ。その顔。

 嘘ついてるのわかってますよ。的!

 この強く言ってやろうか!?


コンコンッ!


 ビクッ!!

 思わずびくりと身体が跳ねてしまう。

 俺が大臣に一言言ってやろうと思ったその時、扉が叩かれた音だ。


「新人のカセーちゃん連れてきたました〜お部屋入って良いですか〜?」


 案の定、カーナの奴が戻ってきたようだ。


「どうぞ。」


 おい、大臣、イケボでの返答やめーや。切り替え早すぎだろ。

 全く、突っ込みも追いきれんぞ。


ガチャ。


 えっ、ひょこっと扉から顔を半分出すの可愛くない?


「失礼しまーす。」


 そう言ってカーナが再び部屋に入ってきた。

 部屋に入るなり丁寧なお辞儀に思わず惚れ惚れしてしまう。

 エロい格好をしているがそのギャップがまた良いのだ。


「カーナちゃん、待ってたよ。お疲れ様だ。」


 大臣はカーナに近づき、手を握る。

 相変わらず馴れ馴れしい奴だ。

 それに、カーナは笑顔で応じる。


 認めよう俺と大臣じゃ経験値が違うようだ。

 先制攻撃は許してやろう。

 だが、対策は簡単、話題を晒しだ。


「な、なっ、なぁ、なぁ、なぁ。」


「やだ、ギルマスさんってば、すっごい吃り気味じゃん。どしたの?」


 カーナに指摘されて、顔が赤くなってしまう。別に吃るつもりは無かったのだ。声をかけようして、それをやめようとして言葉に詰まっただけだ。


「その新人って奴は、顔を見せないじゃないか? まずはそっちも紹介してもらおうか?」


「ありゃ? わぁ大臣さんがいきなり来るから置いてけぼりしちゃったよ〜。」


 にやり。

 俺はその隙を逃さない。

 弱点を見極めるのはハンターには大事な素質だ。


「全く好色の大臣で迷惑かけてすまんな!」


 人の失敗を謝ることで心の広い奴だと思わせることができ、そして、俺が大臣の代わりに謝罪することで、立場をより明確にする。

 二重で美味しいこの策だ。どや。素敵ですーとか言ってくるだろ?


「カセーちゃーん! おいでー!」


 って、おいおい。無視かい!


ガチャ。


「今日はありがとー! いっぱい、カセーもいっぱ、いっーー」


 新人がテンション高めに部屋に入ってきたが、その言葉を言い終わる前に止まった。

 それは、俺と目が合ったからだ。

 正確には俺も止まった。

 いやこの話、時間と空気、全てが凍っただろう。


「えっえっ???」


 何事かわからないカーナがキョロキョロと必死に首を動かしているのは分かる。

 

 しかし、この事態は仕方ない。俺とこの店の新人が知り合いなんて誰が予想ができるだろうか?

 俺だってそうだ。

 そう。俺はこいつとここで会うとは思っていなかったのだ。全くの想定外。どうして良いのかわからないと脳みそがフリーズしてしまっていた。

 

 何故なら、カーナと同じような際どい服をきたマーズがそこに居たのだから。

 

 


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最強魔法剣士にも悩みがある!!!?? REX @REX333333333

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