第19話 桃源郷ってあるんだな。俺はしみじみと浸ることにする。
大臣の後ろをついていくと、やたら豪勢な城が見えてきた。
城? なんで?
「おい。この国には城が二個あるのか? 離れってか?」
「はっはっは。ここはあくまでお店の雰囲気作りのための建物ですよ。あくまで民間の施設です。」
とはいえ、目の前の城は王城よりも雰囲気を感じる。
正確には成金趣味全開じゃないところが好感度高い。
門をくぐると黒服を着た厳つい男が立っていた。
ボディガードなのだろう。
上から下まで見ると、手を挙げてこっちについてこいとジェスチャーで合図をした。
「寡黙な奴だな。」
「えぇ、この方はいつもいるんですが、話したことはないですね。」
そのまま、黒服の兄ちゃんに誘導されて城の中を進んでいくと、一つの部屋に案内された。
「ここはVIPルームですよ。選ばれた者が入れる『ラブリィ♡キャッスル』でさらに選ばれた者のみが入れるヴィップな部屋。ここにある家具や装飾は国内最高峰と言っても良いでしょう。」
大臣がドヤ顔で言うので、それ税金だろと呆れながら、部屋に入り見渡した。
大臣がドヤるだけはある。豪華だ。王城のような成金趣味の部屋ではない。地味なところに拘って金を使ってやがる。こいつは本物の金持ちの金の使い方だ。
そんな事を思いながら俺はふかふかのソファに腰を下ろした。
「ふおおお!!」
身体が沈む。こういうのは高級すぎて逆に慣れないな。
更に待つこと数分、先ほど案内をした黒服よりも煌びやかな雰囲気を纏う別の黒服がやってきた。
「大臣殿。今日もお越しくださいありがとうございます。そちらのお連れ様は?」
今日も?
「やぁ、ドルルンガさん。今日も楽しませてもらうよ。あっ、こちらは今、話題沸騰中のハンターギルドのギルドマスター様ですよ。縁あって、連れてきた次第です。」
「フェルナンドさん、こちらはこのお店のオーナーであるドルルンガさんです。ほら、国庫よりも稼いでいる人がいると話したじゃないですか。この方はその一人ですよ。」
へぇ……俺はドルルンガを見る。
優秀そうな顔つきと雰囲気だ。
大臣もそうだが、優秀か無能かは顔つきと雰囲気で大抵分かるものだ。
あっ、でも俺が一番だけどね。
「ハンターギルドですか。水龍を討伐したとニュースで見ましたよ。それに最近、儲かってるとか噂でお伺いしてますよ。是非とも当店を今後ともご贔屓に下さい。」
ムカつくくらいさわやかな笑顔だ。
「あぁ。」
だが、俺は内心楽しみの感情を気持ちを必死こらえてそれだけを静かに答えた。
キャラが崩壊するわけにはいかないのだ。
クールなキャラを続けなければいけない。
「そうだ。ではギルドマスターさんに当店を気に入ってもらうため、自慢の看板娘、カーナに接客させますよ。」
「カーナ嬢。ぺろ。良いね。」
大臣が舌を舐めずりながら鼻の下を伸ばしながら、親指を立てて答えた。
お前、そんなキャラじゃなかったじゃん。
「では、しばしお待ちを……」
黒服は律儀に頭を下げながら、部屋を退出していった。
―――
――
―
また待つのか。はぁ。待つのは本当に疲れるぜ。これは待ち疲れの労災が下りても良いはずだ。
「フェルナンドさん武者震いしてますね。」
大臣もそわそわしてるじゃないか。
「気持ちはわかります。カーナ嬢はこのトップでヴィップなお店の頂点。私もあった事ありません。これは緊張もしちゃいますよ……」
さっきからヴィップの言い方ムカつくな。
待ちすぎてイライラしているのかもしれない。
そもそも俺はそのカーナなる人物をしらないんだが?
とんとん。
扉がノックされた。急に来るとびくりとするな。
そして、女の声が続いた。
「カーナです~。入って良いですかぁ?」
甘ったるい声が聞こえた瞬間、緊張が走った。
緊張のあまり俺は声が出せず震えが止まらない。
これは魔王と戦った時以上の緊張感だ。もしかしたらラブリィキャッスルは隠しダンジョンなのかもしれないな
ごくり……固唾をのみ込み……ごほっ……むせた。
「どうぞ。お入りください。」
やけに低い声で応じやがった。おいおい、大臣が頼もしく見える。
こいつ、そうとう慣れてるな!?
がちゃ。
「大臣さん、ギルドマスターさん、今日は指名ありがと~♡」
!?
俺は見たものに驚愕の一言だ。
大きい口をあんぐりと開けてしまった。
大臣も同じくだ。
ツインテールに結んだピンク色の髪の毛。
身長は高くもなく、寧ろ小さい方だろう。
俺達に見られていることに気が付いたのか。顔を若干、赤らめて、腰を引かしながら手を胸の前で組んだ。
美少女のみに許されたポーズ。
無論、カーナの顔面の作りが美女というのはある。
だが、それ以上に目を見張ったのは、胸の前で三角形の形で組まれた手の奥に見える双山の巨峰。
それがカーナが小さく動く度にぷるんぷるんと揺れて、揺れているのだ。
そして何より、服の布面積が小さ過ぎる!!!!!!
水着よりも肌色が多いんじゃないか!?
ハレンチ。あんなことやこんなことの妄想が捗―――
俺が怯んだ瞬間。
大臣の野郎が、カーナに近づき、腕を肩に回した。
おい! おいいいいい!!!!!
あの野郎慣れてるってレベルじゃねぇ……くそっ……
「私も早く会いたかったさ。でも会えなかった分だけ、会った時に楽しめるよ。」
とか言ってやがるよ。
へっ。気障だねぇ……
っておい。あの野郎……カーナのおっぱいに自然と手を触れてやがる!!
ぐぬぬ……イニシアティブをとれなかった俺は今自分が憎い……
先制攻撃は基本だろに。
大臣の手が厭らしい手つきが、カーナを襲う。
しかし、当の本人は嫌な顔もせずニコニコとした表情のまま
「もう、大臣さんったら、そんな事言って~ 色んな女の子から聞いてるんだから~ ほんとエッチなんだから~」
ふわりと大臣を避けて俺の方に近寄ってくる。
「ギルドマスターさんも、熱い気持ちカーナにビシビシ伝わってくるよ。」
おい。俺をその変態と一緒にしないで。
俺は紳士だから。
まだ、俺は冷静さを保っているぞ。
すると、カーナは俺の顔を自分の胸に抱え込むように抱きしめた。
!?!?
いきなりやられたため対応などできやしない。
甘ったるい良い匂いと胸の柔い感触が俺の顔を包み込む。
それは、俺の知らないものだった……なんと表現して良いか。俺には適切な言葉を持ち合わせていない。
分かることは、ここは天国に違いないという事だけだ。
☆ ☆ ☆
「いきなりパフパフなんて狡い!!!」
そう声を上げたのは大臣だった。
「初めての子にはサービスしないと~♡ 大臣さんは一杯遊んでるでしょー」
カーナはニコニコとしながら、頬を含まらせる大臣に答える。
「そうだ。あのね~♡ 大臣さん、ギルドマスターさん、ちょっとカーナからのお願いなんだけど~♡ 今日は新人の子も一緒に接客していいかなぁ♡って」
「新人。勿論良いとも。カーナちゃんの頼みならなんでもこいだよ。」
「それじゃ呼んでくるね♡ ちょっと待っててね♡」
がちゃ。
そう言ってカーナはフェルナンドから離れて、部屋の外へ出ていった。
「フェルナンドさん、カーナ嬢のパフパフはどうでしたか!!?」
それは、興味からの質問だ。
あの巨乳だ。
プロフィールを見ると152㎝の身長にバストがFカップ。
その体躯から繰り出されるパフパフなど、そんな、そうそう経験できるものではない。
(うやらましい……!!)
大臣はそう思うのは仕方ない事なのだ。
フェルナンドを嫉妬と羨望を込めてみると、「おっぱ、おっぱ……!!」っと呟きながらその場で立ち尽くしていた。
「わっ、フェルナンドさん! 鼻血! 鼻血垂れてます!!!」
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