第3話 神薙≠玄冶

 人の来ないぼろっちぃ寺。


 自分でもなんで住職などになったのか疑問に思う程だ。


 まぁ⋯⋯忙しくない分、ぐーたら生活ができるからなんとなく続いているんだろうなぁっとつくづく思う。


 いつも通りの作業をしていると、地面が大きく揺れたと同時に寺の近くで何かが発光した。


 神様とやらがいるなら、説教でもしにきたのかと思いつつ、発光した場所に行くと見慣れない格好の小さな女の子が倒れていた。


「⋯⋯⋯⋯」

 めんどくさいな⋯⋯。揉め事は正直持ち込みたくない。持ち込みたくないが⋯⋯雨が降りそうもあり、流石に見捨てていくことは出来そうにないのでため息をつきながら寺に運ぶ。


 寺に帰り、客用の布団をひいて寝かす。


「うーむ⋯⋯これからどうするか⋯⋯まずは警察に連絡もしたいところだが⋯⋯」


 年齢は10歳ぐらいの子供。クリスタルみたいな絹のような髪。顔立ちは将来、街を歩けばだれでも振り返るだろうとわかる顔立ち、そして妖精のような服装⋯⋯。


「この姿を見せて、どう説明すりゃいいんだ?」


 そうこう考えていると彼女の目がパチクリと開く。


 眼も蒼い宝石を即座にイメージさせるかのように美しい。


「□■□■■■」


 どこの言葉なのかわからない言葉に戸惑う。


「あ〜大丈夫かい? お嬢ちゃん」


 額に冷や汗をかき、愛想笑いをしながら自分が生まれてきた国の言葉で言う。


 一瞬、困惑した様な言葉をしたが、すぐに何かをボソボソといっていた。


「ここ⋯⋯どこですか⋯⋯??」


 驚いた事に日本語で答えてくれた。


「ここは古兎町の寺だよ。一応日本語は分かるんだな? どこから来たんだい?」


「ガイファラウンドの大森林⋯⋯けど、無くなっちゃった⋯⋯」


 ガイフランド大森林? オーストラリアかどこかの事か?? 全然分からん⋯⋯。


 が、彼女瞳からは涙がこぼれ始めていた。


(えぇっと、こういう時はハンカチでも渡せばいいんだっけ?)


 袖口からハンカチを出そうとしたが⋯⋯トイレで拭いたりしたハンカチを渡すのはいかんだろうと頭を数回ほど癖でかいてしまう。


「とりあえず警察に伝えるべきか⋯⋯」


 なんとなくそう言っただけなのだが、またボソボソと喋った少女は警察を拒否した。


(なにか事情があるのか⋯⋯)


 困った顔の少女を見捨てるわけもいかず、当分落ち着くまではお手伝いをさせながら寺に住むか? と聞いたら、とても喜んでいた。


 その後、自己紹介をするが、少女の名前は『ちぃ』と言っていた。


(ちぃ⋯⋯珍しい名前だが、日本語?)

 事情に含まれているのだろうと追求はせずにしていたら、急にバキンと何かが壊れる音が聞こえる。


「ん? なんだ今の音?」


 次の瞬間、少女の胸が爆発した。


 爆発と言っても、火が出るわけではないが白い煙だけは舞い上がった。


「だ、大丈夫か?!」


 そう思って、煙を手で払っていると少女の顔と同じ様な大きさの脂肪の塊が2つ出現していた。


「す⋯⋯すまん!」


 咄嗟に顔を背けるが、少女の方はなぜか隠そうとせずに安心していた。


 後に話を聞くと、ちぃの世界(くに)では、気持ち悪く見つめる男が多いのだと教えてもらった。


(そりゃ⋯⋯こんな綺麗な顔立ちで、こんな果実もっていればなぁ⋯⋯しかも10歳かと思っていたら16歳かよ⋯⋯)


 とりあえず、ちぃを寝かした後、縁側で一服しながらこれからの事を考えていた。


「⋯⋯ってか、世界は広いねぇ⋯⋯」

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